奄美大島の特異な自然と世界自然遺産登録に向けた取組
鹿児島県奄美市総務部プロジェクト推進課
東京から飛行機で南へ2時間あまりの場所に位置する奄美大島は、パリ市の約7倍の面積に人口約6万人弱が暮らす島です。気候は温暖で、年間3,000㎜近い雨が降ります。
その中核となる奄美市は、島の北部から中南部にかけて位置します。北部はなだらかな地形で美しい海岸線を有しており、中南部には遺産登録区域を含む豊かな亜熱帯照葉樹林が広がります。また、奄美大島を含む奄美群島は、サンゴ礁に囲まれています。
2021年7月26日、世界遺産委員会において奄美大島は「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の一部として世界自然遺産への登録が決定しました。
奄美大島北部の土盛海岸。白い砂浜が広がる
登録された4島はかつてユーラシア大陸などと陸続きでしたが、地殻変動や海面変動などによりそれぞれの島が形成されました。
その過程から現在に至るまでに、大陸では絶滅した種が現在でも生き残っていたり、島独自の環境へ適応し、固有な種へと進化したりした動植物が生息しています。そのため、特に奄美大島に生息する両生類・爬虫類・陸生哺乳類の多くはこの島でしか見られません。また、地元住民の居住地と遺産登録地が近接していることも特徴の1つです。
本世界自然遺産の保全のため、国・県・市町村・民間による様々な取組が行われています。主に奄美市が関係する取組については、大きく3つに分けられます。
まずは、希少動植物の保護です。島には絶滅の危機に瀕し、希少性の高い動植物が多いことから、密猟防止のための島内市町村独自の条例の制定、密猟防止パトロールの実施、密猟防止のためのセンサーカメラの設置、希少動物の交通事故防止のための減速帯設置を行っています。
奄美大島と徳之島のみに生息する固有種「アマミノクロウサギ」
奄美大島の固有種で「幻の花」といわれるアマミセイシカ
次に、外来種対策です。人為的に移入された動植物による在来種への影響を排除・低減させるため、行政による外来哺乳類のノヤギ・ノネコ及び外来水生生物の防除に加え、各団体と連携した外来植物の駆除を行っています。
そして、観光管理については質の高い観光利用や自然環境への負荷低減などを目的に、世界自然遺産登録区域に含まれる観光拠点「金作原」において、ガイド同行や車両台数・人数の調整、また、通行規制を行うなどの利用ルールを市内1か所で運用し、さらにもう1か所でも導入する予定です。
また、これらの取組の普及啓発や、国・県・民間主体の様々な取組との連携も行っています。
世界自然遺産登録区域に含まれる「金作原」
世界自然遺産登録はゴールではなく、むしろこれからが本当のスタート―この生物多様性を将来にわたって保全していく―であると私たちは確信しています。
2021年7月26日に行われたユネスコ第44回世界遺産委員会における
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の登録を見届けた世界自然遺産登録視聴会
奄美大島に生息する野生動植物の保護を図り、総合的な自然保護を推進することを目的に設置された
奄美大島5市町村で構成される「奄美大島自然保護協議会」公式ロゴ
奄美大島には豊かな海・山林が広がり、自然を利用した様々なアウトドアが体験できます。
住用マングローブ
また、独特の鈍い光沢と精密な絣模様が特徴的な本場奄美大島紬、奄美群島だけで製造が許される黒糖焼酎、伝統的な八月踊りなど、日本本土と異なるユニークな文化と人々の営みも根付いています。
奄美まつりの八月踊り
これらのいくつかは2018年に「ミシュラングリーンガイド奄美群島WEB版」にも掲載されました。covid-19を乗り超える近い将来、それだけに留まらない魅力を探しにぜひフランスから奄美大島へお越しいただけることをお待ちしております。
大浜海岸から望む夕焼け
在来樹アダンから見える大浜海岸の夕景
奄美市役所庁舎
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