日欧地域連携年次会議 オープニングセッション
(1) オープニングセッション(発言要旨)
〇EU委員会
クラスター・インターナショナリゼーション・チームリーダー クリストファー・ギシャール 氏
・産業クラスターは、経済にポジティブなインパクトを与えることが明らかである。
・クラスターに加入している企業は、成長と質の高い雇用を生み出し、正確なマーケットリサーチを行い、単独で動いている企業と比較し、多くの特許を取得している。また、日欧以外の第三国への進出など国際化にも役立つ。
・日欧のクラスターや地域がビジネスで協力関係を築くため、互いの関係性を作る必要があるが、今回のイベントはまさにその一歩。地域やクラスター同士が円滑に連絡を取り合える関係性となることをEU委員会はサポートする。
・輸出入は、中小企業単独では難しく、海外のビジネスパートナーを得ることが重要となる。2日目のマッチメイキングで、パートナーを見つけていただきたい。
・国際化は中小企業にとっての1つの大きな壁であり、クラスター連携は特に中小企業にとって重要。第三国の情報、マッチメイキングなど、クラスター組織からは専門化されたサポートが得られる。
・大きなメリットはクラスター連携の中で、単なるビジネス上の付き合いを越えて、よりよい長期の戦略的な連携を求めることができること。
・クラスターはこのコロナ禍でも機能しており、多くの企業が世界規模のバリューチェーンに繋がるための中核としての機能を果たしている。
〇日欧産業協力センター
エグゼクティブ・アドバイザー(EUマネージングデレィレクター付) ファブリッツォ・ムラ 氏
・日欧地域連携ヘルプデスク事業のミッションは、日欧における中小企業の国際化、相互市場での提携推進。
・日欧のクラスターや自治体が、スタートアップ企業の海外進出支援というミッションを共有しているため、日欧産業協力センターの活動範囲を超えた活動ができる。
・クラスターや自治体の連携により中小企業の国際化を進めようという取組を2015年に始め、欧州のクラスターやスタートアップによる日本へのアプローチの支援を始めた。
・4カ月に1度クラスターサポートミッションを開催し、バイオテク、ナノテク、IOT、航空宇宙産業などに注力しており、このような取組が日欧地域連携ヘルプデスク開設に結び付いた。
・2018年11月に東京で開催された日欧地域間協力セミナー参加者の何人かが本日も出席されている。
・自治体及びクラスターが継続的にいつでも連絡を取り合うというニーズがあり、本日の議論や明日のマッチメイキングイベントにも関係する。
〇日欧地域連携ヘルプデスク
アルザス欧州日本学研究所(CEEJA)プレジデント オリビエ・ベシュト 氏
・CEEJAは2019年に当ヘルプデスク事業に参加した。現在はクレアとの関係を深め、国際協力を加速化している。ご支援いただいている岩手県、岐阜県(特に両知事)にも御礼を申し上げたい。
・当マッチメイキングイベントは、2020年にストラスブールで対面で行うことになっていたが、コロナで中止となったものである。
・将来を見据えたデジタルトランスフォーメーションの考え方から、日欧の参加者を集め、こうしたオンラインイベントを行うことにより、日欧のクラスター及び自治体間の連携が強化されることを期待している。
・来年は、日本又は欧州にて対面での会議を開催し、皆様を招待したい。
〇日欧地域連携ヘルプデスク
CLAIR 常務理事 南光院 誠之 氏
・2020年11月から、CLAIRとCEEJAがコンソーシアムを組み、日欧地域連携ヘルプデスクを運営している。
・当事業は、日欧間で、分野を問わず、地域の産業エコシステムの連携を促進・発展させることを目的としている。日本においてはこうした地域産業の振興は主に都道府県・政令市といった自治体が取り組んでいることから、地方自治体を支援する我々が参画している。
・昨年度は、4回のウェビナーを実施し、農業・食品産業、再生可能エネルギー、ライフサイエンスなど様々な分野における日欧地域連携の好事例を取り上げた。ウェビナーを通して、分野は異なっても、日欧両地域はお互いのよいパートナーとなること、そして地域連携を成功に導く共通の鍵が見えてきた。
地域連携成功のキーワードは次の3つである。
1.自治体トップ同士の信頼関係をベースとした両地域共通の目標
2.専門組織がリードする継続的な双方参加型活動
3.行政・企業・大学など様々な関係者を巻き込んだエコシステムの構築
・今回の会議やマッチメイキングイベントが、日欧の地域が連携する重要性や将来性、また、具体的な方策を確認しつつ、参加団体や今後、日欧の連携を考えている団体にとって有益な情報が得られ、新たな関係を創出する場となれば嬉しく思う。
〇岩手県
知事 達増 拓也 氏
・昨今のデジタル化の進展は、物理的距離を超え、日欧地域の人々が一つに繋がることを可能とした。
・先端技術を活用して開催されたこの「日欧地域連携年次総会」は、日欧地域連携の新しい可能性を示すものだ。
・2011年3月に発生した東日本大震災津波における欧州の皆様からの岩手への御支援に、改めて深く感謝申し上げる。フランスからは、市民安全部隊の派遣や救援物資の提供をいただいた。また、欧州の各都市で、市民の皆様に被災地支援の活動を行っていただいた。
・これまでの10年間で、大津波の襲来に耐えられるように町や村は再生し、コミュニティやビジネスの活動も活発になっている。
・2023年にはフランスでラグビーワールドカップが開催される。ラグビーワールドカップは、2019年にアジアで初めて日本で開催された。被災地として唯一、岩手県釜石市が開催都市に選ばれ、試合が行われた釜石鵜住居復興スタジアムは、被災した小中学校跡地に建設された。
・今後も復興に力強く取り組む地域の姿や、世界中から頂いた御支援への感謝を伝えるとともに、震災の教訓や岩手の魅力を国内外に発信していく。
・岩手県は、CEEJAやアルザス地方と積極的に交流している。2014年からはCEEJAの協力のもと、コルマール国際旅行博へブースを出展し、観光や県産品の魅力を発信している。オリビエ・ベシュト所長には何度も御来県いただいているほか、2019年からは、日欧地域連携ヘルプデスク事業を共同で実施している。
・また、日仏友好160年を記念して開催されたジャポニスム2018に参加し、パリで岩手の郷土芸能を披露するなど、日欧の文化交流も進めている。
・岩手県が特に力をいれているのが、科学技術分野における日欧の連携である。
・欧州のCar of the year2021を受賞したのは、フランスで製造されたヤリスだが、工場は岩手県にある。
・素粒子物理学の国際プロジェクトILC・国際リニアコライダー計画については、日本での実現に向け、世界の研究者が活発な活動を行っているが、岩手県は、ILCの建設候補地として、世界の研究者やその家族を受け入れる準備や、加速器や関連する産業の振興などに取り組んでいる。
・ILCは国や地域、言語、宗教などの隔てなく、世界中の研究者、技術者が結集する国際プロジェクトである。その実現には、素粒子物理学と加速器関連産業の先進地である欧州諸国の協力が欠かせない。欧州と日本、そして世界をつなぐILCの実現に向け、引き続き、御協力をお願いしたい。
・日本や欧州において、人口密度の低い地方でのコロナの感染リスクが低く抑えられており、地方の安全性や魅力・豊かさが再認識されている。
・本総会のようなオンラインの活用は、地方の飛躍につながる未来志向の取組であり、日欧地域間連携のチャンスを生み出すものである。こうした取組の継続により、やがて多くの人々の往来が再開した際には、経済的・文化的交流がますます発展しているだろう。
〇岐阜県
知事 古田 肇 氏
・昨年、コロナ禍にあって、ドイツのメルケル首相は、「今は離れていることが愛情の表現です」と、social distancingについて語った。私も、まさに、こうしてオンラインで日欧地域連携年次会議を行うことが、今日の日欧連携の証しであると感じている。
・本県は、「観光・食・モノ」を一体化させて「岐阜ブランド」として売り込むプロモーションを行うとともに、地域毎の特色、魅力を踏まえて、文化・芸術・学術など多層的な地域間交流を推進し、よりトータルな連携を追求している。
・フランスとの間では、2008年の「日仏交流150周年」を契機に、在日フランス大使館と本県との間で「フランス・岐阜/地域交流プログラム」を策定し、観光や農産物から科学技術、教育に至る包括的なプロモーションを実施してきた。
・特に、アルザス地域との交流では、まず、2014年に飛騨地酒ツーリズム協議会とアルザスワイン街道が友好宣言を締結した。そのことを契機に、本県とオ=ラン県、高山市とコルマール市、白川村とリクヴィル村、岐阜ONSENガストロノミーツーリズム推進機構とアルザス・ディスティネーション・ツーリズムとの5層の交流が進んでいる。
・最近では、岐阜かかみがはら航空宇宙博物館とル・ブルジェ航空宇宙博物館のパートナーシップに関する合意を交わし、連携企画展を開催するなど、多彩な交流へと発展している。
・第二次大戦の際、ユダヤ人に「命のビザ」を発給した本県出身の外交官である杉原千畝氏を縁に、リトアニアと文化や観光など様々な分野で交流を進めている。昨年は、杉原氏の生誕120年・命のビザ発給80年を記念して、記念碑の設置や杉原氏の演劇公演など両地域において盛大な顕彰イベントを行った。コロナ禍で交流が大変難しい中にあっても大いに絆を深めた。
・これらはほんの一例であり、イギリス、ドイツ、ハンガリー、チェコ、イタリア、スペイン、オーストリアなど次々と展開しており、その結果、欧州からのインバウンドは、この10年間で約10倍へと増加している。
・本県が誇るブランド和牛である飛騨牛の欧州への輸出量は、2014年度は約0.4トンにも満たなかったものが、2019年度は欧州全体で約13トンと35倍以上に、また、飛騨牛海外推奨レストランは、同期間で、0店舗から13店舗へと増加している。
・海外のセレクトショップと連携した「グローバル・アンテナ・ショップ」も世界に13店舗、うち欧州には5店舗展開しており、美濃焼や美濃和紙など、本県の地場産品の販路拡大にも繋がっている。
・現在、新型コロナの影響により、両地域の人の往来が困難な状況が続いている。こうした時こそ、これまで培ってきた交流・連携をしっかりと深めていかなければならないと考えている。このため、アフターコロナをも見据えて、リモート会議の開催、オンラインを活用した人と人との交流、県産品の販売・プロモーション、旅行博への参加など、あらゆる機会を捉えて、連携強化に努めている。
〇欧州クラスター協力プラットフォーム(ECCP)
プロジェクト・マネージャー ジャン・マーテン・ドゥ・ヴ 氏
・日本との連携は経済開発協力機構(OECD)を通して以前から行っている。EUにとって日本のクラスターは極めて重要だ。
・ECCPという我々のクラスターは2015年に設立された。産業クラスターで、欧州経済を強化することが目的である。欧州クラスター協力プラットフォームで目指したいのは、クラスターの国際化である。
・ECCPとしては、世界のクラスターにも欧州のクラスターと連携してもらいたい。クラスター連携を通じた競争力と持続可能性を向上、特に中小企業の競争力を上げることが重要だと考えている。
・ECCPは、クラスター関係者の欧州のオンラインハブになり、欧州のカウンターパートと連携を希望する第三国におけるステークホルダーのリファレンス窓口を目指している。
・クラスター間の協力促進を2015年から行い、プラットフォームには1,254のクラスターが登録している。日本のクラスターも登録しており、登録者はサービスを利用できる。
・ECCPはリニューアルし、価値提案(バリュープロポジション)を新たに行った。オンライン上にて、どのようなデバイスでも満足度を向上できるように、包括的なクラスターマッピングやダイレクトに交流できる機会を用意し、フォーカスエリアにEUの優先項目と参入のエコシステムを掲載している。第三国のページも追加し、医療等を優先し、クラスターの会員間コンタクトの便宜を図っている。
・まずはプロフィールを作成し、定期的にアップデートしてもらいたい。論文やニュースのアップ、成功事例のシェア、イベントのアナウンスをすることができるツールもある。