日欧地域連携グッドプラクティスウェビナー(第3回)「健康関連ライフサイエンスビジネスを支援する日欧マルチパートナー連携」を開催!
2021年3月17日(水)に開催された日欧地域連携グッドプラクティスウェビナー(第3回)では、ライフサイエンス分野での「健康関連ライフサイエンスビジネスを支援する日欧マルチパートナー連携」をテーマとし、大阪バイオ・ヘッドクオーター(大阪府)と、欧州4地域(仏オーベルニュローヌアルプ州、西カタルーニャ、独バイエルン州、伊ピエモンテ州)のクラスターから構成されるbioXclusters allianceとの地域連携好事例を取り上げ、日本、欧州4地域からみた日欧連携の重要性を紹介、また日欧双方から約50名の参加者からの活発な意見交換が行われた。
当日の映像、資料はこちら。https://my.duda.co/site/6815427d/ja/best-practices5de790d2
次回は、3月25日(木)17時(日本時間)から第4回目ウェビナー開催!
ヘルスケア分野での『「オウルヘルス」に向けたオウル・ヘルスケア・エコシステムと「未病」に向けた神奈川ヘルスケア・ニューフロンティアとのコンセプトに基づいた地域連携』をテーマにヘルスケア先進都市オウル市(フィンランド)と未病に取り組む神奈川県が登壇。
パネリスト:
神奈川ヘルスケア・ニューフロンティア (神奈川県-日本)
ビジネスオウル/オウルヘルス (オウル市-フィンランド)
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①開会挨拶
日欧産業協力センター専務理事・駐日欧州連合代表部 公使参事官 Philippe de Taxis du Poët 氏
②プレゼンテーション
(講演1)大阪府商工労働部成長産業振興室ライフサイエンス産業課 総括主査 南 千鶴子 氏(大阪バイオ・ヘッドクオーター)
(講演2)Lyonbiopôle 国際関係部局責任者 Simon Gudin 氏(オーベルニュローヌアルプ州、フランス)
BioM 国際関係部局責任者 Stephanie Wehnelt氏(バイエルン州、ドイツ)
③パネルディスカッション
Biocat 科学及び国際関係ディレクター Montse Daban 氏 (カタルーニャ、スペイン)
bioPmed Piemonte Healthcare Cluster クラスターコーディネーター Alberto Baldi氏 (ピエモンテ州、イタリア)
Lyonbiopôle 国際関係部局責任者 Simon Gudin 氏(オーベルニュローヌアルプ州、フランス)
BioM 国際関係部局責任者 Stephanie Wehnelt氏(バイエルン州、ドイツ)
関西医薬品協会 常務理事 薬学博士 山岸 正文 氏
大阪府商工労働部成長産業振興室ライフサイエンス産業課 参事 野村 和秀 氏(大阪バイオ・ヘッドクオーター)
(一財)自治体国際化協会パリ事務所長 羽白 淳 氏
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① 開会
日欧産業協力センター専務理事・駐日欧州連合代表部 公使参事官 Philippe de Taxis du Poët 氏
・大阪バイオ・ヘッドクオーターは、非常によく知られている存在であり、日欧産業協力センターと共に商談会を開催するなど、長年に渡り素晴らしい協力体制を築いている。
・大阪バイオ・ヘッドクオーターは、バイオテクノロジーやライフサイエンス等の分野において重要なクラスターであることから、日欧産業協力センターは、3年前に大阪府と協定を締結し、これら分野での協力体制を強化している。
・2020年2月に、欧州諸国全ての大使と共に、大阪バイオ・クオーターを訪問し、ビジネス関係の会合を大阪やフランス等欧州諸国と行った。
・個々のクラスター毎の魅力もあるが、4つのクラスターが集まることにより、より高い魅力を日本に提供できる。
・コロナ禍で様々な制約がある中において、中小企業のデジタル化が進み、オンライン商談会に日欧から多くの参加があった。これはコロナ禍におけるプラスの部分だろう。
・大阪バイオ・ヘッドクオーターは、食品や飲料分野における商談会も開催している。
②講演1「Evolving regional partnerships - EU-Japan alliance -」
大阪府商工労働部成長産業振興室ライフサイエンス産業課 総括主査 南 千鶴子 氏(大阪バイオ・ヘッドクオーター)
・大阪府、京都府、兵庫県など2府4県を擁する関西は、首都圏に次いで日本経済の中核的な役割を担っている。関西の中心である大阪府は日本第二の都市であり、人口は約880万人である。
・大阪府は、Global Pharma Townとして有名。古くから薬の町として知られ、その歴史は400年にも及ぶ。
・武田薬品や塩野義製薬、田辺三菱製薬など、日本を代表する製薬企業は大阪が起源。我が国の製薬や化学産業の近代化をリードしてきた。
・大阪北部を中心に、大阪大学をはじめとするライフサイエンス関連の優れた大学、研究機関が多数立地するなど、大阪・関西の研究・科学技術のリソースは日本有数である
・大阪大学発のスタートアップの数は、東京大学、京都大学に次いで多く、京大発のスタートアップと合わせると300以上に及ぶ。
・こうした強みを活かし、大阪府内ライフサイエンス関連企業のグローバル展開を支援するため、国際展示会等で大阪府のポテンシャルをPRし、展示会での面談等を通じて海外のクラスターと相互理解を深めた結果、2011年にライフサイエンス分野での連携強化に向けた協定をドイツバイエルン州BioMと締結した。
・両地域には、世界トップレベルの大学・研究機関や製薬企業が多数集積するほか、グローバル企業とそれを支える中小企業の存在など多くの共通点があり、産学官連携の推進や商談機会の提供をはじめとする中小ベンチャー支援など、目指す方向が一致し、協力関係が深化してきた。
・2016年には、欧州のライフサイエンス分野の中小ベンチャーの国際協力を強化し、国際展開を支援するため、欧州4か国にまたがる合同クラスターbioXclusters alliance(ドイツBioM、フランスLyonbiopôle、イタリアbioPmed / Bioindustry park、スペインbiocat)との連携を開始した。
・これら欧州クラスターのほか、各国大使館・総領事館の力添えもあり,これまで緊密な日欧協力関係を構築できている。
・協力関係を活かし,日欧のライフサイエンス関連企業が参加する商談会を、2016年より大阪で毎年実施するなど、EU各国及びその企業等との交流を深めてきた。
・世界的なパンデミックにより、2020年は初めてオンラインにて上記商談会を3日間開催した。
・日欧産業協力センターと連携し、bioXclusters allianceをはじめ欧州クラスターの支援を得ながら、コロナ禍においても強固な協力体制のもと実施できたことは、これまでのあゆみの成果である。
・オンライン商談会には、日欧で合わせて150社を超える企業が参加し、400件近くの商談が行われた。海外からは、フランス、ドイツなど、欧州19か国から参加があった。
・こうした交流をさらに発展させられるよう、今後は大阪、関西一円のバイオベンチャーが参加するような商談会を開催したい。
・大阪バイオ・ヘッドクオーターは、大阪大学をはじめとする大学・研究機関や、関西医薬品協会などの業界団体、大阪商工会議所など、幅広いネットワークがあるので、ライフサイエンス分野の共同開発のパートナーを探している場合や、日本でのビジネスを考えている場合などは、大阪バイオ・ヘッドクオーターへ相談いただきたい。
・これらの交流は、2025年に開催される大阪万博に向けた弾みにもなる。
・2025年大阪万博のテーマは、『いのち輝く未来社会のデザイン』ライフサイエンス領域の研究開発の発展について、多くの人の目に触れる良い機会も用意されている。
・今後も、大阪・関西のライフサイエンス産業の推進に貢献し、世界的なクラスター形成に向け、着実に施策に取り組んでいく。
③講演2「An EU-Japan multi-partners alliance for supporting business in health-related life sciences」
Lyonbiopôle 国際関係部局責任者 Simon Gudin 氏(オーベルニュローヌアルプ州、フランス)
BioM 国際関係部局責任者 Stephanie Wehnelt氏(バイエルン州、ドイツ)
・bioXclusters allianceは、医療に関する4つの国にまたがるクラスターにおける2012年以来の同盟であり、4クラスターのイノベーションやバリューチェーン等が合わさり、大きな力を持っている。
・同盟の目的は、以下のとおり。
①専門知識等の提供により、中小企業の国際化を促進する。
②ヨーロッパへ進出したい組織の重要な入口となる。
③他国市場における欧州の中小企業進出を成功させるための「ゲートウェイアプローチ」の発展。
・「ゲートウェイアプローチ」とは、相手国の規制やネットワークの活用等、同様の課題に直面している中小企業に、特定の領域(加齢、慢性疾患等)で双方向での協業の機会を提供することで、他国への市場アクセスを促進すること。
・ゲートウェイアプローチでは、他国市場でビジネスを開始する方法等の情報交換、新たなプロジェクト等を始めるため、進出国にて適切なパートナーを探すためのサポート、進出先国の専門家との会議やBtoBイベント開催、オフィス開設のサポートを行う。
・bioXclusters allianceが進出先を日本に決定したのは、日本が有数のヘルスケア市場であるというだけでなく、会員中小企業の日本市場進出の際に、BioMが強力な支援ができると考えたため。
・日本市場に特化したセミナー、ラウンドテーブル、日本視察を実施し、バイエルン州東京代表事務所を巻き込み、現地に日本語を話すパートナーを確保した。
・何年もかけて強力で相互に情報交換ができるネットワークを日本に構築し、重要な連携協定を大阪バイオ・ヘッドクオーターと締結することができた。
・日本人スタッフを2年間雇用できたことが、日本でのネットワーク構築に役立った。
・BioMのプロジェクトであるbioXclusters plusにより、日本のビジネスパートナーを引き付けるべく、4クラスターの力を結集し、中小企業の一大代表団を日本に派遣した。
・以前、BioMは小規模なBtoB商談会をバイオジャパン(横浜で開催された展示会)の前日に大阪で開催していたが、現在では大規模な商談会を開催できるようになり、大阪から今まで以上の多くの参加があった。
・bioXclusters allianceは、大阪バイオ・ヘッドクオーターと連携協定を結び、会員中小企業の日本市場進出がスムーズになるよう便宜を図った。特にパートナーを選定するための会合は、日欧双方にとって大変価値ある支援ツールの1つだ。
・bioXclusters allianceは、2016年から継続して大阪での商談会をサポートしており、BioMは毎年バイエルン州の中小企業と供に日本を訪問している。
・bioXclusters plusプロジェクトにより、日本への知識を増やし、欧州の中小企業が日本のパートナーとの仕事に必要なスキルを向上させることが可能となった。
・これらの経験からBioMが包括的な情報やノウハウを記した資料が、bioXclusters allianceのパートナーである欧州の中小企業のサポート教材等に活用されている。
・大阪での商談会が日欧産業協力センター及び大阪バイオ・ヘッドクオーターによる支援のおかげで、大規模かつ大好評の欧州全域に渡るマッチングイベントとなり、米国までも巻き込みつつある。
・数多くのプロジェクトで、4クラスターそれぞれが発展してきた。会員である欧州の中小企業とBioMの日本における知名度も上昇し、4クラスター、特にBioMは日本へ進出する欧州の中小企業の窓口になっている。
・今後、多くの欧州の中小企業が研修を受け、日本に行くことで新たなパートナーシップが生まれるだろう。
・バイエルン州代表事務所を東京に設置したことにより、バイエルン州の企業とヘルスケア関連ビジネスに関する日本からの要望を把握できた。
・BioMはバイエルン州にて日本と共同で利益団体を結成しており、これがバイエルン州の中小企業における日本での様々な形態のビジネス活動へと結実している。
④パネルディスカッション
Biocat 科学及び国際関係ディレクター Montse Daban 氏 (カタルーニャ州、スペイン)
Q日欧地域連携について、このプロジェクト各クラスターの役割及び成果について
・Biocatがあるスペインカタルーニャ州は、スペイン北東部にあり、人口770万人で面積は日本の1/10程度である。
・カタルーニャ州は、スペインで独自の地位を築いており、産業とイノベーションのけん引役として、地理的及び歴史的に海外へと国際関係において積極的に動いてきた。
・Biocatは15年にわたり、活発な欧州クラスターとして1200社以上の企業及び90以上の病院や研究組織を束ねてきた。
・クラスターは、企業、病院、大学、研究所などから構成されている。日本に非常に親近感があり、数多くの協力関係が存在している。
・Biocatができる前から、カタルーニャ州政府からの指示により、多くのプロジェクトに関わってきた。
・カタルーニャ州はBiocatの理事でもあり、カタルーニャ州は日本と長期の協定を結んでおり、カタルーニャ州と日本の投資が始まった1980年代以来、非常に密接な関係にある。
・カタルーニャ州と日本の、経済、文化、教育分野における関係は強化され、確固たるものとなっている。
・カタルーニャ州と日本の関係は恒常的で安定しており、省庁間や在バルセロナ日本国総領事館との調整や協力に役立っている。日本とカタルーニャ州の関係を強化するにあたり、バルセロナ日本総領事館が役立っている。
・bioXclusters allianceにより、企業がスキルを上げ、他市場における規制等をより詳しく知ることができる。
・欧州におけるヘルスケア業界中小企業の日本進出を支援するため、日本に特化した大規模活動を行ってきたが、Biocatは広報と情報発信活動を通して、bioXclusters alliance内でバイオクラスター企業を支援する役割を担っている。
bioPmed Piemonte Healthcare Cluster クラスターコーディネーター Alberto Baldi氏 (ピエモンテ州、イタリア)
Q日欧地域連携について、このプロジェクト各クラスターの役割及び成果について
・イタリアピエモンテ州は、他メンバー地域と比較して小さい。このことから、常にアライアンスやビジネスチャンスを求めて、州外や国外を積極的に開拓してきた。
・ピエモンテ州は、フランスとスイスの国境から150km未満にあるため、外国に進出することは、我々にとっては自然なことだ。しかし、欧州外への進出には、パートナーが必要であると考えている。
・我々のクラスター会員の大多数は中小企業であり、どんなに優れた商品や技術をもっていても、自社だけでは遠方の市場に出ていく準備ができない。
・我々が、これまで構築してきたネットワークを提供することで、会員企業は道案内を受けながら他国市場へ進出することができ、欧州から遠く離れた国、日本でもこのような方法が可能である。
・中小企業がグローバル競争に立ち向かうのは容易なことではない。非常に競争が厳しいため何らかのサポートが必要である。
・bioXclusters allianceを通じて、大阪バイオ・ヘッドクオーターと繋がりを持つことができ、会員企業に研修を行い適切な情報を与えることができ、この協力関係がなければ絶対に不可能だっただろうビジネスチャンスを会員企業に提供することができ、我々は非常に多くのことを学ぶことができた。
・現在、bioXclusters alliance事業と並行して医療技術と医療機器に特化した別のプロジェクトを進めており、日本はここでもターゲット国の1つであることから、今後とも日本との関係を深めていきたい。
BioM 国際関係部局責任者 Stephanie Wehnelt氏(バイエルン州、ドイツ)
QバイオXクラスターズアライアンスbioXclusters allianceは8つの国と協定を結んでいるが、日本との協力を通して、他国におけるプロジェクトが促進されるといったことはあるか。
・継続的な交流で小さなゲートウェイもあれば、BioMのように戦略的な日本進出により成果を上げているゲートウェイもある。
・日本戦略のテンプレートを中国に使用し、日本進出と平行して中国への進出を計画している。
・市場理解などの支援なしで中小企業が中国へ進出することは、日本進出と同様に難しい。
・中小企業には資金や人が不足しており、新たな進出国に向けた最適な市場戦略を立てることができない。BioMの活動及びbioXclusters allianceにより発展させた日本進出における戦略のおかげで、企業への手助けが可能となった。
・BioMは中国、韓国、カナダとコンタクトしているが、アメリカ、南オーストラリア等と接触しているクラスターもある。
・進出先国の市場理解を事前に理解することが重要であり、企業の助けになる。進出先国に関しての情報、中小企業が持たない情報を提供できることが強みになる。
Q欧州の他地域クラスターからbioXclusters allianceに参加希望があった場合、参加は可能か。
・bioXclusters allianceは閉鎖的な組織ではないが、我々の関係は永続的な相互信頼が基礎になっており、それゆえに、ネットワーク、ベストプラクティス等を関与する全パートナーに共有できる。
・他のクラスターでbioXclusters allianceに興味があり、共に実施するプロジェクト提案ができるのであれば、話を伺いたい。
Lyonbiopôle 国際関係部局責任者 Simon Gudin 氏(オーベルニュローヌアルプ州、フランス)
QバイオXクラスターズアライアンスbioXclusters allianceは8つの国と協定を結んでいるが、日本との協力を通して、他国におけるプロジェクトが促進されるといったことはあるか。
・アジア地域は、世界の中でも文化の違いが大きく、礼儀作法など文化的な知識が必要であり、bioXclusters allianceから大きい支援を受けることができた。
・1つの異文化を理解すると、他の文化と向き合う際に大きな財産となる。
・我々はバイオテクノロジー分野だけでなく、bioXclusters allianceにおける様々な分野との協力を通して、医療技術の企業の国際化を手助けしたい。
・様々な市場に入っていくために、積極的に大阪とタイアップしながら日本のパートナーを探している。医療機器プロジェクトにおいても期待が持てる。
Q欧州の他地域クラスターからbioXclusters allianceに参加希望があった場合、参加は可能か。
・非常に素晴らしい提携関係を大阪と積み上げているように見えるかもしれないが、提携関係を築き、関係を深めるには時間がかかる。
・時間がかかっても挑戦したいのであれば、連絡を欲しい。
関西医薬品協会 常務理事 薬学博士 山岸 正文 氏
Q国際連携について現在の取組状況を簡潔に教えてください。その中で、国際連携について最も価値のある点、国際化において最も難しい課題及び未来へ向けてのキーポイントについて
・関西医薬品協会は1948年に設立した、大阪・関西を中心とする製薬関連会社、約320社が加盟する地域団体である。
・日本の医薬品産業は、健康寿命の延伸に重要な役割を担うと共に、経済成長をけん引する中核産業の1つとしても期待されているが、一方で、世界に類を見ない少子高齢化や医療の高度化による医療費の増加から、薬剤費抑制策が進められており、加えて創薬難易度の上昇に伴い、企業間競争が激化するなど、医薬品関連産業を取り巻く環境は、大変厳しい状況にある。
・こうした環境で、製薬企業では、治療法が見つかっていない「アンメット・メディカル・ニーズ」が残る疾患への「プレシジョン・メディスン」の実現や、従来の治療薬を起点に、病気になる前の未病や予防、さらには治療後の予後にいたるまでの、健康寿命の延伸を目指した「トータルヘルスケア」、いわゆる「キュアからケアへ」、新たなビジネスモデルにシフトしようとしている。
・従来の低分子化合物をターゲットとした創薬や手法では、長期間と膨大な費用がかかり、成功確率も年々低下していること等から、新たに、中分子・高分子、遺伝子治療、デジタル医療などの様々なモダリティや、AI、IT、ビッグデータなどを用いた新たな創薬手法による探索研究にも取り組んでいる。
・こうした様々なモダリティや、新たな創薬手法による探索研究は、自社のリソースや基盤技術のみでは対応できないことから、国内のみならず海外の様々なパートナーとの連携が不可欠となっており、国内外とのオープンイノベーションの推進が必要。
・薬価の引き下げ等で、日本国内の医薬品市場が、今後大きな拡大が期待できないことから、中小企業を含め、欧米のみならず、市場拡大の著しいアジアなどの海外市場への展開を模索中である。
・当協会では、こうした会員会社が抱える課題・問題の解決に少しでも貢献できるよう、会員会社からの要望の多い様々なセミナーや講演会、交流会などを実施している。海外関連では、各地域との研究開発での連携や規制の動向、市場展開の可能性等の情報を提供している。
・グローバル化を進める上での課題は、距離、時差、言語、規制、文化・慣習の違い等が挙げられるが、コロナ禍により、Web会議が一般的となったことから、距離の問題が解決された。
・言語については英語が共通語として使われ、時差についてはメール等の使用によりある程度解決できる。規制については、種々課題はあるが、ICHやPICSなど、世界的な調和が図られている。
・俗人的な文化・慣習の差異における解決策は、コミュニケーションであると考えている。互いのことよく理解し、互いが望んでいることを十分に話し合い理解し、互いがWin-Winの関係であることが、国内外の区別なく、ビジネスを行ううえで、とても重要なことであり、今後、将来に渡ってのキーポイントにもなると考える。
・国内・海外問わず、よいパートナーを見出すことができるかが、最も重要かつ難しい課題であり、その解決策として、本日のテーマでもある地域連携・国際連携があげられる。
・特にバイオクラスターは、病院や大学、スタートアップ、同業他社や異業者などと比較的容易に交流できると共に、様々な情報を得ることができる環境が整備されており、製薬会社にとって、まさに”One Stop Shop”のエコシステムと考えることができる。
・大阪には北大阪バイオクラスターがあり、神戸や京都にはそれぞれバイオクラスターがあるが、機能的に十分とは言えない。
・これら関西にあるバイオクラスターと補完し合うことができる、海外バイオクラスターとの連携は、企業にとってよりよいパートナーが見いだされる環境が整えられるため、当協会としても今後、推進していきたいと考えている。
大阪府商工労働部成長産業振興室ライフサイエンス産業課 参事 野村 和秀 氏(大阪バイオ・ヘッドクオーター)
Q商談会を活発にしていくための今後の課題について
・大阪バイオ・ヘッドクオーターは、日欧産業協力センターと共同で欧州クラスター及び企業と大阪・関西のライフサイエンス企業との商談会を開催し、年々、規模も大きく育ててきた。
・商談会への課題は、今後の開催方法と対象分野であると認識している。
・開催方法については、この商談会は直接顔を合わせて行うことを前提とし、大阪で開催してきたが、2020年はコロナ禍のため、初めてオンラインにて開催した。
・来日することなく、多くの日本企業との商談が可能であるという利便性を実感した欧州企業が、コロナ終息後に、以前と同様に来日して頂けるかどうか不透明である。
・リアルでの面談、デジタル面談、両者にそれぞれ長所短所があるが、日欧それぞれの中小ベンチャー(SME)がWin-Winになるような開催形態を提供すべきだと考えているところである。
・対象分野について、この商談会は、大阪・関西の強みである創薬や創薬支援をメインテーマにおいて開催してきたが、山岸さん指摘のように、大手の製薬企業は人工知能(AI)やビッグデータを活用する異業種とのコラボに目を向け始めている。
・我々主催者は、顧客のニーズ変化に柔軟に対応していくことで、当商談会を長く有益なものにしていくことを考えている。
・当商談会では、創薬・創薬支援の分野を大切にしながらも、狭い意味のヘルスケアではなく、新たな分野を開拓していく必要性があると考えている。
・欧州クラスターとは、日欧の参加者がともに望むような分野やテーマ設定について忌憚のない意見交換ができればと考えている。
Q「ライフサイエンス分野で世界をリードする」という目標を通じて、国際協力の観点から今後期待していることについて
・首都である東京や京都は知っていても、大阪や神戸の知名度は低いと言わざるを得ず、大阪を中心とする関西にはライフサイエンス分野のアカデミアと企業がコンパクトに集積していること等は世界には知られていないだろう。
・我々がすべきことは、大阪・関西の知名度を上げることであり、そのために必要な情報を積極的に効果的に発信していくツールに大いに期待したい。
・欧州ライフサイエンス企業による商談会や2025年の万博などを通じて、「KANSAI Bio Community」をブランド化し、その結果として、世界から人材や投資を呼び込めるようなエリアに育てていきたい。
(一財)自治体国際化協会パリ事務所長 羽白 淳 氏
Qヘルスケア分野における大阪府の大阪バイオ・ヘッドクオーターと欧州4地域のbioXclusters alliance間の連携において、どのような点が日欧地域連携のグッドプラクティスと言えるか。
・この連携が、地域における中小企業の国際連携また国外市場へのニーズに応えて進められ、成果を上げている点、互いに信頼できるパートナーとして連携を発展させている点が、好事例である要因の一つかと思う。
・日本のライフサイエンス分野における薬業の中小企業は、変化の潮流の中にいる。
・大阪だけでなく、欧州のbioXclusters allianceのターゲットの一つでもあると感じる。
・地域にある中小企業の国際連携や国外市場へのニーズに応えて、各種見本市や商談会などの取組がこの連携では進められているが、製薬業という特性から、具体的な成果には年数を要したり、全てを公開することは難しい等困難な側面はあるのだろうと感じる。
・しかし、見本市、商談会などを通じた具体的な成果を上げている本連携は、地に足の着いた日欧地域連携のグッドプラクティスと言えるだろう。
・欧州側は日本から大阪へ、日本側はドイツから欧州4地域へとパートナーを見つけ、長期的に信頼できる連携先と関係を構築しているように、閉鎖的でないオープンな姿勢である点も、特徴的だと感じる。
・こうした姿勢で外に開かれている地域には、今後、第3国での連携への発展可能性もあると感じる。
・コロナ禍にあって、ウェブを活用することで広がった可能性、直接対面し関係を深めていく重要性を考える必要があると感じる。
・ヘルスケア分野は、世界共通の課題を抱えるが、一方で日欧の地域ごとの違いやそれぞれの強みもある。日欧の各地域に存在する多様な中小企業の連携、相乗効果を、効果的、効率的に生み出す大阪と欧州4地域との地域連携の今後に期待している。
次回、第4回目となるウェビナーは、『「オウルヘルス」に向けたオウル・ヘルスケア・エコシステムと「未病」に向けた神奈川ヘルスケア・ニューフロンティアとのコンセプトに基づいた地域連携』をテーマに行われます。
また、過去のウェビナー動画及び資料を、下記ウェブサイトにて公開しておりますのでご覧ください。
●第4回目ウェビナー日程:
2021年3月25日(木)17時(日本時間)~
●パネリスト:
神奈川ヘルスケア・ニューフロンティア (神奈川県-日本)
ビジネスオウル/オウルヘルス (オウル市-フィンランド)
●申込方法:
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●過去のウェビナー動画・資料
下記URLよりご覧ください。