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パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

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INETセミナーで日本の自治体の新型コロナウイルス対策事例発表

 2021年1月18日から22日にかけて、フランス地方行政幹部職員候補生の育成機関(INET)による「連帯と公衆衛生」に関するオンラインセミナーが開催されました。本セミナーは、仏自治体の事務総長や事務次長、大規模自治体の管理職などを目指す57名の学生が4チームに分かれ、グループワークを行いながら、フランスの自治体や国の州保健庁(ARS)、救急医療を担う SAMUなどの様々な行政分野や組織の取組を学び、第一線の自治体の首長や幹部などにその成果をプレゼンテーションする双方向のプログラムで行われました。 

  今回、クレアパリ事務所は、2014年のクレア海外自治体幹部交流協力セミナー参加者で、本セミナーのコーディネーターであるJean-Luc LODS氏(セーヌ・エ・マルヌ県事務次長)から提案を受け、セミナーの国際比較のセッションにおいて日本の制度や事例を発表することとなり、将来のフランスの自治体幹部職員に日本の自治体の好事例や強み、課題などを発信する貴重な機会となりました。

 INET(Institut National des Études Territoriales)は、全国地方公務員センター(CNFPT, Centre National de la Fonction Publique Territoriale)の研修機関で、行政、技術、文化、保健、社会などあらゆる分野の地方自治体幹部のための学校です。1997年にストラスブールに設置されて以来、州、県、メトロポールなどのコミューン共同体、人口4万人以上のコミューンなどの自治体の役職者および将来の幹部候補者を対象に、各種研修やさまざまなサービス(専門的サポート、イベント、コンサルタント、インターンシップ、ネットワークづくりなど)を提供しています。学生は大学院を卒業して入学した人から、数年間民間企業や自治体で経験を得た人、国や自治体での10年以上の職務経験を持つ人まで様々で、フランスの国の行政官を育成するENA(École Nationale d'Administration:フランス国立行政学院)に相当するとも言われています。学生は卒業後、自治体の幹部ポストに求められる資格を得ることができ、仏自治体の事務総長や事務次長などの事務方トップ、また、州など大規模自治体の管理職を目指して活躍します。
 

 セミナー4日目となる21日、「自治体の連携による危機管理の国際比較」をテーマとして、日本、オーストリア、モロッコ、フランス国境地域を取り上げた4つのセッションが設けられ、それぞれの地域の自治体によるコロナ禍での公共サービスに関する発表と討議が行われました。各セッションは、次の4つの観点から、各国の事例を紹介し、行政のアジリティとフレキシビリティについて考えることを目的としたものです。

 ①住民のニーズに対する行政のアプローチ

 ②行政と協働するパートナーとの関係性

 ③人事管理と労働環境

 ④公共政策の教訓と課題

 日本については、羽白クレアパリ事務所長から、フランスと比較して低い水準ではあるが、最近感染が拡大している日本のコロナ禍の状況から、都道府県・市町村の二層制の自治制度や大規模に進んだ市町村合併など日本の地方自治制度の概要、国際的に見ても多くの業務を担う日本の自治体の役割、コロナ禍における自治体の権限や公衆衛生業務、自治体間の相互連携、他の組織やスタートアップ連携事例、ワクチン接種体制に向けた取組などについて講義を行いました。(発表資料はこちら

 発表後の質疑応答では、学生から、フランスと日本はコロナ禍において医療従事者不足やデジタル化対応といった観点で同じ課題を持ちながらも、フランスは国、日本は地方自治体が主となってさまざまな取組を行う点が両国の違いとして挙げられました。これに対し、クレアパリは日本から見たフランスの地方自治制度に対する考察を述べる機会となりました。また、平時における高齢者や障がい者に対する支援、育児・保育に関すること、労働力や専門家などの人材確保、男女共同参画社会に関する取組など多岐にわたる分野で質問があり、新型コロナウイルス関連以外にも日仏で抱える現状や課題には多くの共通点があることを再認識しました。

 最終日には、学生が自治体の首長や県議長などにセミナーを踏まえた今後の政策提案を行うセクションが設けられ、学生たちは様々な地方自治体の事例などを基に、コロナの危機に立ち向かい、地域の健康と社会的行動のために最善と思われる解決策を提示しました。具体的な例ではなく、一般的な理論や概念が中心となっていたものの、スタートアップなど地域資源を自治体が有効活用するといった案など、日本の事例が活かされたと思われる内容も見られ、日本の自治体の取組がフランス地方幹部職員の育成に貢献できたことをうれしく感じました。

 クレアパリ事務所では今後もINETと連携して、日本の自治体政策や好事例の紹介など日仏自治体交流活動推進と情報発信に努めてまいります。

iJAMPHP

日本の自治体のコロナ対策事例紹介