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パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

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フランスのコロナ対策、国と自治体の取り組み

 各国に大きな被害を与えた新型コロナウイルス。中でも欧米諸国では死者が数万人規模に上り、多くの国がロックダウン(都市封鎖)を行うという状況まで追い込まれた。フランスもその1つであり、マクロン大統領は3月16日の全土都市封鎖を宣言する演説では「我々は戦争の中にいる」という激しい言葉を用いて国民の理解と団結を求めた。
 コロナに関しては医療制度を所管し、大規模な対策を行う政府に注目が集まった。しかし、その一方で全国コミューン選挙の延期など自治体に与えた影響も大きく、自治体も地域の実情に応じた対策を取っている。

 

フランスの感染拡大状況と対応

 感染拡大当初、最初の感染者は1月24日にフランス中部のボルドーと、パリ市があるイル・ド・フランス州で判明した3人と認識されていた。(その後5月に、事後の検体検査で2019年12月27日時点での感染者の存在が判明。)フランスでの感染拡大と政府の対応は次の通り。 

1月24日

国内で3人の感染を確認。

2月25日

初めてフランス人患者が死亡。

2月29日

感染者100人突破。

3月8日

感染者1,000人突破。

3月11日

WHOがパンデミックを宣言。

3月12日

マクロン大統領が演説。16日からの学校閉鎖や一時帰休制度拡充を発表。

3月14日

同日24時以降のカフェ、レストラン、店舗の営業禁止を決定。

3月15日

全国コミューン選挙(1回目投票)実施、歴史的低投票率。死者累計100人突破。

3月16日

マクロン大統領が国民に向けて演説。22日の全国コミューン選挙(2回目投票)延期や翌日以降の外出制限、国境封鎖を発表。

3月17日

正午から外出制限、いわゆるロックダウン開始。アテスタシオン(申告書)と身分証明書を携帯した必要最小限の外出を除き、市民の外出禁止。違反者は罰金。フランス国境が封鎖され、医療関係者やフランス人帰国者、フランスに本拠のある滞在許可証所持者などを除き、フランス入国禁止。

3月19日

感染者1万人突破。

3月24日

死者1,000人突破。衛生緊急事態法が施行され、公衆衛生緊急事態宣言を発出。

4月2日

死者5,000人突破。この頃、飛行機やTGV(フランス版新幹線)を利用し、国内外への患者の広域搬送を実施。4月上旬に感染はピーク。

4月7日

死者1万人突破。

4月13日

マクロン大統領が演説。5月11日から外出制限を段階的に解除する方針を発表。

4月14日

感染者10万人突破。

4月28日

フィリップ首相が外出制限の段階的解除の具体的な計画を発表。

5月11日

国内を感染状況等により2地域に分け、外出制限解除の第1段階開始。国内100kmまでの外出のアテスタシオンの廃止、飲食店を除く店舗の再開などを実施。

6月2日

外出制限の解除が第2段階に移行。飲食店の再開(パリ等では屋外営業のみ)や国内の自由な移動などが認められる。

6月14日

マクロン大統領が演説。22日からの解除第3段階や15日からの一部緩和前倒し、今後2年の欧州主義、地方分権などコロナ対応の新たな国家運営方針の7月公表を予告。

6月15日

全ての地域で飲食店の屋内営業が認められ、EU域内国に対し国境が開放。

6月22日

解除第3段階、国内全ての保育園、小学校、中学校で生徒の受け入れ再開。

6月28日

延期された全国コミューン選挙の2回目投票実施。

7月1日

フランスを含むEUが、域外に対する境界の段階的、部分的な開放を開始。

7月10日

公衆衛生緊急事態宣言が期間終了を迎え解除。

7月21日

行政機関、店舗、公共施設など公共の屋内空間でのマスク着用が義務化。違反者は罰金。

 

全国コミューン選挙への影響

 憲法上、フランスの地方自治体は州、県、コミューンの3種類である。このうち日本の市町村に相当するコミューンは全国に3万5,000弱あり、平均人口は2,000人足らずと規模は小さい。フランスの自治体では公選の議会議員から首長や副首長が選出されるため、選挙は大きな節目となる。コミューン選挙は名簿式比例代表制で行われ、1回目投票で過半数を得た名簿があれば、その時点で結果が確定するが、ない場合は10%以上を得票した名簿が参加できる2回目投票を行う必要があり、指定期日までは名簿の統合も可能である。
 今年は6年に1度のコミューン選挙の年に当たり、1回目投票が3月15日、2回目投票が22日に行われる予定だった。ところがコロナの感染拡大により、1回目投票は実施したものの、投票率は44.7%と、投票率60%を超えた過去の選挙よりはるかに低いものとなった。さらにパリ市など1回目投票で結果が確定しなかった4,922のコミューンの2回目投票は6月28日に延期された。加えて、第1回目投票で結果が確定した約3万のコミューンでも議会が開けず、段階的解除に入ってようやく5月28日までに首長等の選出が行われるなど大きな影響を受けた。

 

封鎖解除段階での自治体の取り組み

 フランスの自治体が感染拡大の第2波の予防も見据えて行った取り組みの1つが、市民へのマスクの無料配布である。パリ市は20回以上使用できるマスクを220万枚確保し、11歳以上の市民1人に1枚を配布した。市のホームページで予約を受け付け、指定日時に市内約900の薬局のうち800の薬局で受付票と引き換えに配布した。この取り組みの費用は500万~600万ユーロが見込まれ、自治体の費用の半分は国が手当するとされている。
 パリ市は屋外広告会社のJCDecaux社の協力を得て、市内の屋根付きバス停留所と自動洗浄公衆トイレに消毒ジェルポンプを備え付けた。同社はパリ市との契約で、屋外広告を組み込んだバス停を2,000カ所、自動洗浄公衆トイレを435カ所に設置しており、ジェルはバス停の4分の3に当たる1,500カ所、自動洗浄公衆トイレは全435カ所に設けた。
 さらに、パリ市は自転車専用道約50kmの拡張を決めた。公共交通機関を避け、自転車を使用する市民の増加への対応とともに、パリ市が以前から取り組んできた環境対策を促進するものだ。
 パリ市議会選挙は一部が市議会議員を兼ねる区議会ごとに実施され、2回目投票では現職のイダルゴ市長が共和党のダティ・パリ市7区長や政府与党LREMのブザン前保健相との争いを制し、再選を果たした。イダルゴ市長が取り組んできた環境対策に加え、コロナ禍による社会危機への対応が一定の評価を得たと見られている。
 コロナは完全に終息した訳ではなく、第2波の懸念も依然としてささやかれるが、政府や自治体の対応について引き続き注視していきたい。

(初出)日経グローカル 391号(2020年7月6日発行) ※ 掲載時の状況に応じて一部加筆

 

アテスタシオン確認

通行人のアテスタシオンを確認する警官

 

バス停消毒ジェル

バス停に設けた消毒ジェルポンプ

 

公衆トイレ消毒ジェル

公衆トイレに設けた消毒ジェルポンプ

各国に大きな被害を与えた新型コロナウイルス。中でも欧米諸国では死者が数万人規模に上り、多くの国がロックダウン(都市封鎖)を行うという状況まで追い込まれた。フランスもその1つであり、マクロン大統領は3月16日の全土都市封鎖を宣言する演説では「我々は戦争の中にいる」という激しい言葉を用いて国民の理解と団結を求めた。コロナに関しては医療制度を所管し、大規模な対策を行う政府に注目が集まった。しかし、その一方で全国コミューン選挙の延期など自治体に与えた影響も大きく、自治体も地域の実情に応じた対策を取っている。フランスの感染拡大状況と対応感染拡大当初、最初の感染者は1月24日にフランス中部のボルドーと、パリ市があるイル・ド・フランス州で判明した3人と認識されていた。(その後5月に、事後の検体検査で20191227日時点での感染者の存在が判明。)フランスでの感染拡大と政府の対応は次の通り。