熊本市長が震災の経験からNGOとの協働の意義を発信=10年ぶり欧州評議会
10月29日から31日まで、フランス東部ストラスブールにおいて欧州評議会地方自治体会議が開催され、大西一史熊本市長が、NGOとの連携について熊本地震の経験に基づき発言を行いました。
欧州評議会は、ヨーロッパにおいて人権、民主主義、法の支配の分野で国際社会の基準策定を主導する国際機関です。現在、欧州47か国が加入するほか、アメリカ、カナダ、日本、バチカン、メキシコの5か国がオブザーバー国となっています。
今回開催された「地方自治体会議」は、欧州評議会において毎年春と秋に総会が開かれ、地域の民主主義と地方自治の促進などを議論することを目的としており、加盟国の地方自治の状況を分析するモニタリングやその結果に基づく勧告、地方選挙が民主的に遂行されているか否かの監視、その他欧州が直面する様々な問題に対する自治体施策についての議論等の活動が行われています。
クレアは、オブザーバーとして、毎年この地方自治体会議に参加しています。過去には同会議において日本の首長等が日本の地方自治制度や現状について紹介する機会もありましたが、ここ10年はそのような機会がありませんでした。今回、クレアは、在ストラスブール総領事館の協力を得て、同会議事務局に対して働きかけを行い、オブザーバーであるクレアの代表として、実に10年ぶりに同会議での日本の首長の参加が実現しました。
総会で大西熊本市長が参加した議題は、自治体とNGOとの協働を加盟国の自治体に促す欧州評議会コードの改正を審議するもので、30日の夕方から行われました。大西市長は、議案提出者のトーマス・アンダーソン議員(スウェーデン)のプレゼンテーション及び欧州評議会における国際非政府組織(INGO)会議のアンナ・ルルカ会長の声明に続く討論において、議長からの指名を受けて英語で発言を行いました。
大西市長の発言要旨は以下のとおりです。
・2016年の熊本地震に際して、欧州、世界中からいただいた励ましや支援に感謝する。
・熊本市はM7クラスの大規模地震に2度見舞われた。余震は4,000回を数え、避難者は11万人を超えた。
・災害後の行政の支援には限界があった。一方、NGOは、行政ができる以上のスピード感と柔軟性をもって避難所での活動に従事することで現場の問題に対応した。
・これらの経験を通じ、自然災害発生前の平時からの様々な関係者との関係づくり、情報共有が極めて重要であることを理解した。
・この教訓を念頭に置き、熊本市は、災害発生前の関係者間の協働指針と詳細なガイドラインの作成を強く支持する。
大西市長が、熊本地震の経験に基づくNGOなどとの協働の重要性を強く訴えると、議場は賛同の拍手で包まれました。
審議終了後には、議案提案者のスウェーデンの議員が大西市長のもとを訪れ、議場での発言に対する謝意が伝えられるとともに、欧州の自治体は災害対策にとどまらず広い分野における日本の取組に注目しているとのことでした。
また10月30日には会議に先立って、クレアパリ、在ストラスブール日本国総領事館吉川首席領事同席のもと、大西市長とアンダース・クナップ欧州評議会地方自治体会議議長(スウェーデン地方自治体協会〔SKL(英:SALAP)〕会長)との会談が行われました。大西市長から熊本地震の経験と教訓や日本の地方自治の現状を聞いた議長は、「日本の自治体の災害対策はもとより、高齢化社会、人口減少に対する欧州各国の問題意識は高い。日欧共通の課題であり、欧州は日本の取り組みを学びたい。今後も日本からぜひ参加してほしい」と発言、大西市長も「自身が責任者を務める全国市長会の防災対策特別委員会の会議が来月日本で行われるため、他の自治体にも呼び掛けたい」と応えました。このように会談では、日欧双方の地方自治体共通の課題に関する知見の共有や日本の地方自治体のさらなる参加の重要性を確認するなど、今後の日欧の自治体間の関係発展につながる有意義なやり取りが行われました。
今回の欧州評議会地方自治体会議における一連の活動は、欧州において日本の自治体の存在感を示す好事例となりました。次回の欧州評議会地方自治体会議は3月17日~19日に開催予定ですが、クレアパリでは、このような機会を今後も創出するべく、フランスにおける情報発信・交流の機会を引き続き追求してまいります。
欧州評議会地方自治体会議ウェブサイト
https://www.coe.int/en/web/congress
欧州評議会地方自治体会議議事録(動画)(注:大西市長発言は4時間43分から)
https://vodmanager.coe.int/coe/webcast/coe/2019-10-30-2/en/176
欧州評議会会場(ストラスブール)
大西熊本市長(左)とアンダース・クナップ欧州評議会自治体会議議長(中)の会談
会談後のクレアパリ田中次長(左から2番目)、大西熊本市長(右から4番目)、クナップ議長(右から3番目)
総会で発言する大西熊本市長