福井県大野市 フランスの広域行政組織 エロー・地中海・都市圏共同体と 「水分野での協力に関する覚書」を締結
≫ 名水のまち 福井県大野市
福井県東部に位置する大野市(図1)は、日本百名山の荒島岳など1,000m級の美しい山々に囲まれた盆地です。
市街地のいたるところに「清水(しょうず)」と呼ばれる湧水地(図2)が点在し、市内の約7割の世帯が家庭用ポンプで地下水を汲み上げて飲み水などの生活用水として使用している、全国でも珍しい名水のまちです。
しかし、高度成長期には産業の発展や人々の生活様式の変化などにより、地下水の使用量が増えたことで多くの家庭で井戸枯れが発生し、市内の清水が枯れることもありました。
これをきっかけに水を大切にする意識がいっそう高まり、行政と市民とが一体となって地下水保全の取り組みを行なうことで、今日でも豊かな地下水が守られてきました。
(図1)福井県大野市 |
(図2)代表的な湧水地の一つ 御清水(おしょうず) |
≫ 水への恩返しCarrying Water Project(キャリング ウォーター プロジェクト)
大野市では市民が守ってきた「水」を核とした地方創生・人口減少対策プロジェクト「水への恩返しCarrying Water Project(キャリング ウォーター プロジェクト)」に取り組んでいます。
これは、大野に古くから受け継がれる助け合いの精神である「結(ゆい)」のもと、普段「あたりまえ」として使っている水は、本当はとても「ありがたい」ものだということに人々が気づき、地域と地域、人と人とを結びつけながら、これまで受けてきた水の「ありがたさ」を国内のみならず、世界に向けて「恩返し」という形で分かち合う取り組みです。
その活動の一つとして、アジアで安全な水の確保に最も苦しんでいる国、東ティモールを支援しており、市民や企業から寄付金を募り、現地に給水施設を建設するための支援を行っております。
≫世界との連携した取り組み フランス エロー地中海都市圏共同体
この「水への恩返し」を世界に広げるため、2017年11月に水保全などで世界的な先進国であるフランスを訪問し、在日フランス大使館やフランス環境連帯移行省の紹介のもと、行政組織や企業などに対して説明をしてきました。(図3)。
中でも、フランスの広域行政組織「エロー地中海都市圏共同体」が我々の取り組みに深く共感し、2018年3月15日に同共同体の代表を務めるアグド市長が来日し、今後、両者間で世界の水問題について連携した取り組みを実施するため「水分野での協力に関する覚書」を締結いたしました(図4)。
これは、2015年に仏日両政府で締結された「低炭素で環境にやさしい社会を構築するための二国間連携に関する協力覚書」に基づいた、自治体間の連携として初の事例となります。
(図3)2017年11月にフランスを訪問 大野市の酒蔵から渡仏し、日本酒造りをしている「昇涙酒造」を訪問 |
(図4)環境省にてアグド市長が代表を務める広域行政組織 「エロー・地中海・都市圏共同体」と覚書を締結 |
≫今後の展開
今回の覚書の締結は、「水」を通じた取り組みを行うための足場ができた段階であり、今後議論を重ね具体的な取り組みを確立していく予定です。
また、今回のフランス訪問をきっかけに大野市と協力したいとの意見が他にもあり、今後の展開に大きく期待しているところです。
越前大野城(えちぜんおおのじょう)と城下町 |