ル・コルビュジエ建築遺産について ~国境、大陸を越えた文化遺産を守り、普及させるために~
ル・コルビュジエは20世紀にパリを拠点に活躍した建築家、都市計画家です。合理的、機能的で明晰なデザイン原理を絵画、建築、都市等において追及し、20世紀の建築、都市計画に大きな影響を与えました。
彼の作品は、世界中に存在しますが、日本では東京にある国立西洋美術館が彼が設計した唯一の作品です。
現在、ル・コルビュジエの建築作品のうち、フランス、スイス、ベルギー、ドイツ、アルゼンチン、インド及び日本の7カ国が、所在する17の資産について、共同で「『ル・コルビュジエの建築作品』-近代建築運動への顕著な貢献―」として、世界文化遺産登録を目指しています。
ル・コルビュジエ建築遺産自治体協議会(ASLC)は、2010年1月27日に設立された、ル・コルビュジエ作品が所在する自治体や所有者等から構成される団体です。
その目的は、①遺産の保全と公的機関や観光業界に対するプロモーションのため、遺産地域のネットワークを構築する。②遺産の保全、保護、活用及び維持管理に関する知識や経験について情報交換及び共有する場とする。③これらの目的を達成するための事業を、フランス及び国際的な文化遺産組織、特にUNESCOや世界遺産委員会と連携を図り、企画し、実施する。となっています。
現在、ASLCには6カ国19自治体23遺産が加盟しており、日本からは東京都が正会員、台東区が準会員として加盟しています。
1月26日にASLC年次総会がフランス東部のサンディエデヴォージュで開催され、筆者は東京都の代理として出席してきました。会議では、世界遺産登録の進捗状況や、ヨーロッパ評議会への「文化の道」の登録の進捗状況について話しあわれました。また、広報活動として、2015年に写真コンクールを行い、応募数が400点近くあったことが報告されました。選考は近く行われ、写真コンクールの入賞作品展示会を行う予定とのことです。
その後、彼の作品の一つである、サンディエデヴォージュの工場を外観から視察しました。この工場はいまだに現役で活躍しているため、残念ながら建物内部に入ることはできなかったのですが、彼の作品のコンセプトが工場という現場に生かされていることを実感しました。例えば、彼の作品の典型である地上階のピロティがトラックを停めるスペースに有効活用されていること、また、建物の中は壁がなく自由に仕切りを作ることができるため、作業スペースを柔軟に生み出すことができることなどの説明を受けました。
台東区は、世界遺産登録を目指す国立西洋美術館の価値やル・コルビュジエの偉業などのPR活動に官民連携で取り組んでいます。その活動は、お祭りやイベントのパレードやブースでのPR活動、世界遺産登録推進ニュース(http://www.city.taito.lg.jp/sekaiisan/news.html)の発行、パンフレット・啓発グッズの作成・配付、小学校での出前事業、区民向けの講座など多岐にわたります。
ル・コルビュジエの建築作品が世界遺産登録されることにより、国立西洋美術館を含む彼の作品の認知度がますます上がることが期待されます。
ASLC総会の様子 |
サンディエデヴォージュの工場 |
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国立西洋美術館の外観((C)国立西洋美術館) |