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パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

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パリ市長選挙の仕組み

 

 週末の23日(日)と翌週30日(日)は、6年に一度のコミューン統一選挙。3万7000弱の市町村(コミューン)で一斉に選挙が行われます。

 今回選ばれた議員たちが9月の上院議員選挙の選挙人の大多数を占めることになることもあり、政治的に重要な意味を持つ選挙ですが、中でもパリ市長選挙は、社会党・UMPの両有力候補がしのぎを削り注目を集めています。

 ただ、その選挙の仕組みは意外と複雑。そこで、パリ市長が選ばれる手順をご紹介しておきたいと思います。


 パリの選挙は各区単位で行われます。区議会議員の上位者がパリ市議会議員を兼ねる形をとるため、むしろ区議会議員選挙の集合体がパリ市議会選挙と考えた方が分かりやすいでしょう。

 選挙民は自らの住む区(1区~20区)において、支持する政党の候補者リストに投票します。選挙方式は、非常に長い名称なのですが「非拘束名簿式・2回投票比例代表併用・多数派プレミアム制」と呼ばれています。
 具体的には、まず各政党が提出する候補者リストには各区の議席数と同数の候補者が記載されており、選挙人はこのリストを投票箱に(正確にはこのリストを所定の封筒に入れて、それを透明の投票箱に)投函します。リスト上の候補者を削除・追加したり順序を変えたりすることはできません。
 3月23日(日)の第一回投票で有効投票数の過半数を獲得したリストは、各区の議席の過半数をまず割り当てられます。これが「多数派プレミアム制」と呼ばれる所以です。そして、残りの半数の議席は、有効投票数の5%以上を獲得した候補者リストに比例配分(厳密には最大平均法で)されます。
 第一回投票で過半数を取得したリストが無かった場合には第二回投票が3月30日(日)に行われます。ただし、そこに参加できるのは第一回投票で有効投票数の10%以上獲得したリストのみ。ただし、第二回に参加しない、第一回投票で5%以上得票したリストの候補者を追加する等によりリストのメンバー構成を変更して参加することが認められています。
 第二回投票では過半数の得票は求められず、相対多数を得たリストが議席数の半分をまず取得し、残りの議席は第一回と同様の方法で他のリストに比例配分されることになります。

 冒頭にも述べた通り、パリ市議会議員は区議会議員の一部が兼任する形をとりますが、このパリ市議会議員を兼務する議員を含めて区議会議員は20区合わせて527人。これが人口比例で各区に配分されます。最少は都心の1区で11議席、最大は住宅・商店が集中する15区で54議席となっています。
 各区の区議会議員のうちパリ市議会議員を兼ねるのは、候補者リストの当選者のうち原則として上位1/3の者とされています。下位2/3は区議会議員専任となるわけです。
ですので、例えば、15区では区議会議員54人のうち下位2/3の36人が専任の区議会議員、上位1/3の18人はパリ市議会議員を兼任することになります。
 ただし、各区における専任の区議会議員は最低10人必要とされているため、例えば、1区では11人中10人が区議会専任とされ、残る1人のみがパリ市議会議員兼任となります。そのため、パリ市議会議員の総数は市議会議員を含む区議会議員総数527人の1/3よりも少ない163人となっています。

 ではパリ市長はどのように選ばれるのでしょうか。
 4月5日(土)にパリ市議会の特別会が招集され、議会内で市長を選挙することとされています。第一回目の投票でパリ市議会総議席数163の過半数(82票)を得る者がいなければ第二回投票に進み、そこでも過半数獲得者がいなければ第三回投票に進み、相対多数を取得した議員が議長、すなわちパリ市長となります。
 さらにその8日後の4月13日(日)には、各区議会において、パリ市議会議員(=パリ市議会議員を兼任している区議会議員)の中から、同様の手順により区長が選出されることになります。区長はパリ市長を兼ねることはできません。

 ちなみにパリには市町村(コミューン)制と県制が併存した特別な地位が与えられています。つまり、パリ市長はパリ県議会議長(日本で言うところの県知事)を兼ねているのです。  

 こんな大切な選挙ですが、市民が「市長(=知事)に〇〇氏を」と考えた場合、自分の住んでいる区の、○○氏がリストの筆頭を務める政党の区議会議員のリストに投票をすることになります。直接首長に投票をする日本の感覚からすると少々まどろっこしいかも知れません。

 所長  黒瀬 敏文