パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

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オランド大統領記者会見と州・県の行方

昨日(1月14日)16時半から、一昨年5月のオランド大統領就任後3度目となる大規模な記者会見が開催された。


テーマはフランスの経済情勢を反映して、経済雇用政策にとりわけ重点を置いたものであったが、その文脈で不可避のテーマとして、より踏み込んだ分権政策について言及がなされた。
どういうことかと言えば、今回の政策の柱は、「サプライサイド政策への転換」、すなわち大方の社会党のイメージに反して、企業活動の支援を通じて経済を活性化し、供給の増大を通じて需要を生み出そうとするものである。もちろんオランド自身は「転換」ではなく、既存の方針の「加速」だとしているが。
その目玉は、社会保険料の企業負担等の抜本的引下げと、その一方で企業の雇用拡大努力を約する、政府・経営者間の「責任協定」の締結である。具体的には、2017年の任期満了までに、300億ユーロから350億ユーロの労働コスト削減を図ることを目標に、家族公庫関連の社会保険料の使用者負担分を全廃する、とした。

しかし政府は既に深刻な財政赤字を抱え、その解消はEU安定成長協定の枠組み遵守に向けた国際公約となっている。必然的に歳出の合理化・削減の思い切った取組みが俎上に上らざるを得ない。今般、大統領は2015年から2017年までに500億ユーロ以上の公的支出の削減を行うと言明した。2014年予算法における150億ユーロの節減と合わせて700億近い規模である。

大統領の地方制度改革への言及は、こうした文脈の中でなされたものであった。

オランド大統領の、「州の数に変化があってもいい。県の将来は再定義されねばならない。」という発言について、国民議会で行政簡素化委員会の責任者を務めるティエリ・マンドン議員(社会党)は、現在22あるフランス本土の州を15にすることが念頭にあると解説する。

「地方分権新展開」関連3法案の一本目、「地方行政の刷新とメトロポールの確立に関する法律案」は昨年12月に成立した。その中には、基礎自治体レベルの機能を強化すべく「メトロポール」を創設することが盛り込まれ、とりわけリヨン(正確にはリヨン大都市圏共同体)はその帰属するローヌ県から2015年1月1日に独立することが確定済みだ。パリを含め14に上ると予定されるメトロポールの成立を受けて、今後の県の位置付けの議論はどう展開するのだろうか。

オランドはまた、「州には立法権限を含め新たな権限が与えられるだろう。より大きな自由を与え地方議員に働いてもらう」と述べ、さらに「自治体間の権限配分の厳格な明確化も行われなければならない」とも宣言した。加えて、国の地方への交付金は、地方の行政の簡素合理化に向けた努力に応じて交付されることも示唆している。

実は先の一本目の法案には、権限の輻輳問題を解決する手段として、政策分野ごとに言わば、「責任自治体(chef de file)」を法定する内容が盛り込まれている。地域ごとに異なる階層の自治体や国が集まって、最後はその分野において中心的役割を果たすべき自治体が政策を取りまとめ決定するという仕組みだ。しかし審議の過程で、この責任自治体による調整に強制力を与える仕組みが削除されるなど、骨抜きにされたとの思いがにじむ。一方、フランス版の「国・地方協議の場」も上院の反対で削除された。オランド流の「実効性ある話合い」重視の方策はことごとく行く手を阻まれた格好だ。

そのような状況を背負いつつ、「闘う姿勢」をこの会見では示して見せた。しかしそのような姿勢を取ればとるほど、前サルコジ政権の手法に近づいているようにも見える。

二本目、三本目の分権法案は今春4月以降の本格審議が予定されている。3月と9月には大きな選挙(コミューン議員、上院議員)も控える。今年もフランス地方制度改革の流れからは目が離せそうにない。

 

 所長 黒瀬敏文