日仏地方自治フォーラム「日本とフランスにおける都市整備―今求められる生活環境とは―」を開催しました。
2013年10月24日に、第5回目の日仏地方自治フォーラムをフランス上院日仏友好議員連盟とクレアパリの共催により開催しました。
この日仏地方自治フォーラムは、両国が抱える共通の課題をテーマとし、日仏自治体関係者、専門家を招いてのパネルディスカッション形式で開催しており、今回は、「日本とフランスにおける都市整備―今求められる生活環境とは―」と題し、日仏両国の共通課題を取り上げながら、今後のまちづくりの方向性を探りました。
日本からのパネリストとして、熊本市の幸山市長、飯田市の牧野市長、また建築の専門家として山本理顕氏をお招きし、フランス側からは、2012年にルーブル美術館の別館が開館したランス市のシルヴィアン・ローベル市長、建築の専門家として、ナスリン・セラジ氏とリュディー・リチョッティ氏が参加しました。
以下ご発表いただいた内容を簡単にご紹介します。
熊本市の幸山市長からは、市街地における人口の低密度化が引き起こす問題に関し、熊本市の公共バス利用者の低下などの課題を取り上げながら、2013年3月に制定された「熊本市公共交通基本条例」に基づいた公共交通のグランドデザインを進めていること、また、利用者の少ない路線がカットされがちな現状を回避するため、市の補助金を路線維持のために利用してもらうなど、利用者の視点に立った経営努力を促していることなどをご説明いただきました。
飯田市の牧野市長からは、飯田市を中心とした周辺の14市町村からなる南信州定住自立圏という共同体を形成し、広域連携政策に取り組んでおり、特に医療分野では、地域に必要な医師数の確保が困難な状況の中で、飯田市立病院を中核病院と位置づけ、市立病院以外の各病院および診療所がそれぞれの役割を的確に担うことで、軽症患者が市立病院で受診する件数を極力減らし、市立病院が高度医療に専念できる体制を整えていることなどをご説明いただきました。
また、建築家の山本理顕氏からは、専門家の立場から、「一住宅=一家族」を前提とした住宅供給、行政サービスを続けた結果として、地域社会の弱体化などの弊害が発生しているのではないかとの問題提起の後、新たな空間モデルとして、住宅と商業施設が一体となった日本の「町屋」のシステムを継承した「脱専用住宅化」という、日本古来の、路地に面した住宅で、職人や商人が自分の家で仕事をしていた「見世」のような、小さくても経済が成り立つ仕組みとともに、まちづくりを考えることでコミュニティの考え方が劇的に代わるとのご提案をいただきました。
事例発表後の意見交換では、日仏両国の多くの都市で画一的な都市計画が見受けられ、個々の地域の特色がなくなりつつあることについて、日仏の参加者間で活発な議論がなされました。仏側の建築家のナスリン・セラジ氏からは、「行政や建築家だけでなく社会全体がこの問題を引き起こしたといっても過言ではなく、皆がどの地域に行っても同じような便利さを求める個人主義的な思想が先行し、時間をかけて必要な都市計画を考えることができなくなっている。山本理顕氏が提案した『脱専用住宅化』などは、現代の個人主義を覆す、今求められているイノベーションのきっかけとなる発想の一つではないか」と貴重な提言がありました。
今回の日仏フォーラムにおいて、両国の参加者から最も多く発せられた言葉は「イノベーション」というキーワードでした。都市部における、今求められる生活環境を考えるとき、多様な視点を含んだ新しいアイディアが必要であること、またそのアイディアを広範囲で共有することの重要性が共通認識として確認されました。
○プログラム
1 日仏地方自治フォーラム
テーマ:「日本とフランスにおける都市整備-今求められる生活環境とは-」
2 開催日 2013年10月24日(木) 14:00~
3 開催場所 リュクサンブール宮クレマンソーの間(フランス上院)
4 主催者 (財)自治体国際化協会パリ事務所
5 後 援 在仏日本大使館
6 参加対象者 約100名
(日本側) 欧州駐在自治体職員、在仏経済関連団体関係者など
(フランス側)仏地方団体関係者、仏経済関連団体関係者、仏上院日仏友好議員連盟など
司会:ミカエル・ビスミュット |
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14:00 | 開会の辞 |
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・ダヴィッド・アスリン上院議員(上院日仏友好議員グループ代表) |
・在フランス日本国大使館 鈴木大使 | |
・木村 陽子(自治体国際化協会 理事長) | |
14:20 ~ 17:45 | 円卓会議(総論、パネルディスカッション) |
[総 論] | |
―フランス側 | |
・ジャン ピエール・シューウール議員 | |
(元地方自治体担当閣外大臣ロワレ県選出上院議員) | |
―日本側 | |
・黒瀬 敏文(自治体国際化協会パリ事務所 所長) | |
[パネルディスカッション] | |
自治体からの発表(日本側、フランス側で交互に発表) | |
・幸山 政史市長 (熊本市) | |
・シルヴィアン・ローベル市長 (ランス市) | |
・牧野 光朗市長 (飯田市) | |
―質疑応答 | |
建築専門家からの発表 | |
・ナスリン・セラジ氏(マラケ国立高等建築大学校長) | |
・リュディー・リチョッティ氏(建築家) | |
・山本 理顕氏(建築家) | |
―質疑応答 | |
17:45 | 統括・閉会 |
ジャック・バラード 外務省アジア移動大使 | |
18:00 | カクテル・パーティー |
19:30 | カクテル・パーティー終了 |