パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

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オランド分権改革を追う(11) ~上院第一読会後の修正案~

6月6日、分権三法案(4月10日閣議決定)のうち、一本目の「地方行政の刷新とメトロポールの確立に関する法律案」が上院で修正のうえ可決された。今回はその主要ポイントを箇条書き的にまとめておくことにしたい。
なお、上院案は、賛成183票、反対38票、棄権125票で可決。社会党、左翼戦線に加え、UMPの1/4、中道の1/3が賛成に回った。

下記に述べるように、かなりの修正点はあったものの、「第一読会としては素晴らしい結果」「大事な一歩を踏み出した」とマリリーズ・ルブランシュ分権担当大臣はコメントしている。

(上院第一読会後の修正案の概要)

●一般権限条項の復活の一層の明確化
・政府案にあった、州や県に関する「一般権限条項」の復活について、上院案ではさらに、州に関する権限を列挙した地方自治法典の規定を削除するなど、よりその姿勢を明確にしている。
さらに、地方公共団体や課税型広域行政組織は、国と協定を結ぶことで権限移譲を受けることができるという、言わば実験的で柔軟な権限移譲の枠組みを追加している。

●「地域ガバナンス協定」を削除、「地域行政活動調整会議」は柔軟化
・政府案のストーリー、すなわち、一般権限条項を州・県を含め各階層に認める代わりに、団体間の権限輻輳の解消に向けて各州に、国・地方公共団体をメンバーとする「地域行政活動調整会議」を設置し、各分野について「リーダー自治体」が全体調整をする、という流れは維持されたが、「地域ガバナンス協定」の削除、役割分担の修正など、いくつか重要な変更がなされている。

・政府案では、地域行政活動調整会議は、メンバー間で、権限の調整手続きなど大枠を定める「地域ガバナンス協定」やそれに従って策定される「分野別実行計画」の協議の場であった。また「地域ガバナンス協定」の締結を拒んだり、分野別実行計画に違反したりすれば補助金等によるペナルティが課せられることとされていた。
上院案では、こうした手法を「過度の拘束を強いるもの」「官僚的発想」と批判し、「地域ガバナンス協定」を削除。地域行政活動調整会議は単なる意見交換の場となり、ここでの合意に基づいて事業を実施するという、より緩やかな仕組みに変更された。

●州・県・コミューンの役割の再編
「リーダー自治体」となるべき分野、言わば各階層の役割分担について、政府案からかなりの変更が加えられている。特に、州については多数の権限が追加された。

・州
(政府案)経済発展、交通網整備
(上院案)持続可能な開発・整備、経済発展、各種交通手段のイノベーションと相互補完、生物多様性、エネルギー転換、アジェンダ21関連(更に政府により、企業の国際化も追加)
・県
(政府案)社会保障、社会環境の改善développement social、市民の自立、観光、電子化の推進、地域の連帯
(上院案)ほぼ変更なし(développement social→cohésion sociale)
・コミューンおよびその広域行政組織
(政府案)環境保全qualité de l’air、移動環境の整備mobilité durable
(上院案)近接サービスへのアクセス保障、地域開発、空間整備

なお、観光は県のみではなく、全ての階層で共有の権限分野へと戻されている。

●三大都市圏のメトロポール:リヨン、マルセイユは「○」、パリは「×」
【リヨン】
・2015年1月1日までの、特別な地位を有する憲法72条に定める地方公共団体としてのリヨン・メトロポールの創設については承認された。

【エクス・マルセイユ・プロヴァンス】
・コンセンサスを得るのは困難と目されてきたエクス・マルセイユ・プロヴァンス・メトロポール(こちらは課税型コミューン間広域連合組織の一種。マルセイユ大都市圏共同体など既存の連合組織6つを統合するもの)の2016年1月1日の設置も承認。

【パリ】
・他方、パリ・メトロポール(コミューン間広域行政組織を構成団体とする課税権のない混成事務組合)は否定された。
2010年12月のサルコジ改革法では、課税型コミューン間広域行政組織への帰属義務を免除していたイル・ド・フランス州内のコミューンについて、今回の政府案では2015年12月31日までの帰属を求めていたが、上院案では、小冠3県(オー・ドゥ・セーヌ県、セーヌ・サン・ドゥニ県、ヴァル・ドゥ・マルヌ県)については、この義務付け自体削除されている。

●「一般的メトロポール」はハードルを高めた上で任意化
・その他の「一般的メトロポール」については、政府案では、人口50万を超える都市生活圏に所在する人口40万を超える全ての課税型大都市共同体、課税型都市圏共同体が自動的に「メトロポール」になるとされていたが、この都市生活圏人口要件50万超を人口65万超へと引き上げ、対象を絞った。
これにより、メトロポールとなり得るのは、ボルドー、グルノーブル、リール、ナント、ニース、レンヌ、ストラスブール、トゥルーズ、ルアンの9市となり、モンペリエ、トゥーロンは対象外となった。

・また要件を満たした場合であっても、メトロポールとなるかどうかは任意とされた。

●大都市共同体の要件は緩和
・現在人口45万超とされている大都市共同体の要件を40万人超に引き下げる政府案は、上院案では25万超へとさらに大幅に引き下げら、間口が広げられた。

●「農村部整備協働拠点」の新設
・政府案には無かったものとして、「農村部整備協働拠点pôle rural d’aménagement et de coopération」が追加導入されている。これは上院環境委員会からの意見を踏まえて追加されたものであるが、大都市優遇への批判を回避し、農村部にアピールする狙いがある。
具体的には、経済発展や地域整備、環境保全などを目的として、課税型コミューン間広域行政組織(コミューン共同体CC)間で混成事務組合を組織するもので、州内あるいは県内の様々な主体が、共通の目的を持った同種の事業を契約contractualisation infra-régionale et infra-départementaleにより整合的に進める枠組みとなるものである。前述の「地域行政活動調整会議」の構成メンバーとしても位置付けられている。
内容的には、農村部における共同プロジェクトの強化を目的に95年に導入された「地域圏pays」(2010年のサルコジ改革法で廃止(既存のものは存続))を復活させる意味合いを持つ。
現在のバスク地域圏Pays basque内の10程度の広域行政組織によって、2015年1月1日に第一号「農村部整備協働拠点」が結成されることが想定されている。)

(パリ事務所長 黒瀬敏文)