パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

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オランド分権改革を追う(8) ~地域の連帯及び民主化の促進に関する法律案③~

本年4月10日に閣議決定された分権関連3法案の紹介シリーズ、今回は3本目の「地域の連帯及び民主化の促進に関する法律案」のうち、「地域行政に対する国のガバナンスの枠組み」に係る部分について紹介する。今回が、当初の法案の紹介としては最後となる。
次回以降は、国会審議における議論や修正等の内容について追っていく。

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(前回まで)

1 地方行政の刷新とメトロポールの確立に関する法律案
(1)権限の体系化に向けた方策
(2)メトロポールの確立

2 経済成長と雇用拡大に向けた州の強化及び地域間格差解消の促進に関する法律案
(1)経済成長に向けた条件整備
(2)雇用と若者の未来
(3)地域間格差解消の促進

3 地域の連帯及び民主化の促進に関する法律案
(1)権限の移譲
(2)環境整備とエネルギーの転換
(3)地方公共団体の活動の民主化および透明化

(以上、前回まで)
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(4)地域行政に対する国のガバナンスの枠組み

①国・地方自治体の対話の回復と「地域高等評議会」
国・地方が連携して進める公共政策の整合性を確保することを目的として、国・地方公共団体の恒常的な対話の枠組みとして、従前の国・地方公共団体が会する全ての機関を発展的に解消し、「地域高等評議会Haut Conseil des Territoires (HCT)」を創設することとしている。議長を務めるのは首相である。
同評議会は、地方公共団体に関連する全ての改革案について諮問を受けることができるとともに、首相の求めに応じ、地方公共団体に関連するあらゆる政府提出法案、地方公共団体に影響を与える欧州連合のあらゆる法的措置案について討議することができるとされている。また、国・地方が共有する政策のあらゆる評価に参画する。

②地方公共団体への義務付けの抑制
国による義務付けの増大を防ぐため、2008年来、基準評価諮問委員会commission consultative d’évaluation des normes (CCEN)が設置され、国や欧州の諸法令案により導入される様々な基準が地方公共団体の財政運営に与える影響については、同委員会への諮問が義務付けられている。今回の改正案では、同委員会の権限の及ぶ範囲を拡大し、これまで同様の視点から事前チェックを行う仕組みの存在しなかった議員提出法案について、それが地方公共団体に関わるものである場合には、国民議会議長及び上院議長が同委員会に、地方公共団体への財政的影響について諮問できるものとされている。
また、同委員会が否定的な意見であるにも拘らず公布に至った法案については、当該意見は官報に掲載されることとされるなど、その効果についても強化が図られている。
現在の基準評価委員会は、公選職にある者15人(国会2人、地方公共団体13人)、国の役所の代表7人の計22人から構成されているが、改正法の下でも、地方代表が過半数を占め、委員長は地方代表から選任するといった委員会組織に変更はない。ただし、その位置づけは、現在の地方財政委員会Comité des finances locales (CFL)の下部委員会から、今回新設される地域高等評議会HCTへと変更がなされており、委員を地方財政委員会の本委員会から選任する必要は無くなることとなる。

③地方公共団体の海外協力活動
地方公共団体は、国際協力や開発支援のため、海外の地方公共団体と協定を締結することができることが明示された。
現在、フランスの地方公共団体は、制度、文化、経済等の分野をはじめとする国際協力、多数の開発プロジェクトへの参画を通じ、140の国において活動を展開している。

④国からの権限移譲に伴う人員及び財源補償に関する措置
本法が規定する権限移譲に伴い、国の部署を地方が活用することを可能とし、さらには、地方へと組織の移管が行われることが予定されている(欧州プログラムについては例外あり)。
本法に規定された権限移譲に伴う財源補償は、移譲される権限の執行に当たりこれまで国が必要としてきた「歴史的価格coût historique」に基づき行われることとされている。

(パリ事務所長 黒瀬敏文)