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パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

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オランド分権改革を追う(7) ~地域の連帯及び民主化の促進に関する法律案②~

本年4月10日に閣議決定された分権関連3法案の紹介シリーズ、今回は3本目の「地域の連帯及び民主化の促進に関する法律案」のうち、「地方公共団体の活動の民主化および透明化」に係る部分について紹介する。

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(前回まで)

1 地方行政の刷新とメトロポールの確立に関する法律案
(1)権限の体系化に向けた方策
(2)メトロポールの確立

2 経済成長と雇用拡大に向けた州の強化及び地域間格差解消の促進に関する法律案
(1)経済成長に向けた条件整備
(2)雇用と若者の未来
(3)地域間格差解消の促進

3 地域の連帯及び民主化の促進に関する法律案
(1)権限の移譲
(2)環境整備とエネルギーの転換

(以上、前回まで)
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(3)地方公共団体の活動の民主化および透明化

①財政運営における透明性と責任
州会計検査院の監査対象となる全ての地方公共団体(人口2000以上の団体を数年間で回すため年間約700団体)には、議会に監査報告書を提出した後1年以内に、同報告書における指摘事項に対して取った具体的方策について議会に報告することを新たに義務付けることとされた。
なお、地方公共団体ないしその広域行政組織の財政状況の悪化に関する州会計検査院の意見は全て、議会への提出や採決を待つことなく、直ちに公表される。
地方公共団体が、地方長官の作成した予算枠組み内において財政再建計画を実行する際には、当該地方公共団体は、経常経費・投資的経費のいずれについても、そこに定められた金額を超えて経費の支出をし、収入の取り立てをすることは許されない。

大規模地方公共団体(州、県、人口1万以上のコミューン)においては、予算編成方針に係る議論は、公債管理、負債の内訳、定員の内訳と推移、主たる支出項目に関する予算・決算情報を総合的に掲載した「予算編成方針に係る報告書rapport d’orientations budgétaires」に依拠して行われなければならない。コミューン間広域行政組織及びその構成コミューンの予算編成方針に係る報告書は相互に送付することが義務付けられる。

コミューン、県、州及びコミューン間広域行政組織は、市民の財政情報へのアクセス性を向上させるため、当初予算書及び決算書に、財政情報に関する簡潔で総合的な説明書を添付しなければならない。インターネットのサイトがある場合には、当該説明書のサイト上の掲載も義務付けられる。

デクレに定められた一定水準を超える全ての投資的支出について、その決定に係る情報の内容や財政的透明性の改善を図るため、執行部は後年度への影響に関する分析を行い、議会に提出することが義務付けられる。

会計検査院は、地方公共団体の会計の適法性、公正性、正確性régularité, sincérité, fidélitéを保証する実験的取組を、本法の公布の3年後から数えて5年間実施することとされている。これは2013年の経常支出が2億ユーロを超える地方公共団体およびその広域行政組織のうち、参加希望のある団体を対象に実施されるもので、参加を希望する場合は、本法施行後1年以内に地方公共団体所管大臣(内務大臣)に申し出、内務大臣は、会計検査院の意見を踏まえて参加団体を定めることとされている。最終的には、会計検査院と参加団体との間で、内務大臣と公会計所管大臣(財務大臣)の意見を踏まえつつ結ばれる協定の中で、具体的実施方法や必要な予算・人員の手当て、適用される会計基準等が明らかにされることとされている。この実験的取組については、公布3年後に中間評価が、その5年後には最終評価が行われ、会計検査院及び参加団体の意見を付して、報告書の形で国会に報告される。

②地方議会の運営改善と市民参加
人口5万超のコミューンは、議会に「財政委員会commission des finances」を設置し、予算審議の前に開催することが新たに義務付けられることとされた。その運営や構成はコミューン議会規則に委ねられている。
州議会議長には、1954年にその起源を有する州経済社会環境評議会conseil économique, social et environnemental régionalに、州が参画する公共政策の評価を要請する権限が新たに付与されることとされた。州経済社会環境評議会は、企業や個人事業主、労働組合、市民活動団体等を構成員として全州に設置されている諮問機関で、州の予算や国地方計画契約等の策定の際には、州議会は同協議会に意見を求めることが義務付けられているものであるが、その機能が政策評価へと拡張されたものである

③開発委員会の設置対象地域の拡大
地域の意見を一層反映するため、民間企業の代表者をメンバーに含む「開発委員会conseil de développement」は、その設置対象地域を人口5万未満の都市部に拡大されることとされた。当委員会は、持続可能な開発に関する地域政策の作成及び評価に当たって諮問を受けることが義務付けられるほか、地域のあらゆる課題について自ら意見を述べ、あるいは諮問を受けることができるとされている。

④請願権の拡大
コミューンに対する市民の請願権droit de pétitionを拡大し、市民は、あらゆる事項についてコミューン議会での討議事項として登録することを請求できるとしている。また請求に必要とされる市民の署名数も半減され、請求のハードルが下げられた。

⑤行政情報へのアクセス
インターネットのサイトを有する人口3500超の地方公共団体とコミューン間広域行政組織は、電子データとして提供可能な行政情報をサイトに掲載せねばならないこととされた。これは国・地方を通じたオープン・データの取組の一環である。

⑥広域行政組織の一体性の強化
構成コミューンから、公共・非公共下水道について権限移譲を受けたコミューン間広域行政組織の議長には、同時に特別警察権pouvoir de police spécialeも移譲され、これによって当該議長は、広域行政組織のエリア全体の整合性を確保しつつ、排水施設への接続義務の免除をはじめ公共・非公共下水道に関する諸規則を制定することができることとされた。
同様に、メールの反対がある場合を除き、道路行政について権限を有するコミューン間広域行政組織の議長は、市街地の内外を問わず、コミューン及びコミューン間広域行政組織の道路について交通警察権を行使することができる。議長には、タクシー業者への駐車許可の発行権限も付与される。

コミューン間広域行政組織のうち、農村地域や準都市地域に置かれる「コミューン共同体communauté de communes (CC)」には、コミューンから、下記の四つの権限が義務的に移譲されることとされている。
・観光事務所の設置による観光振興
・公共及び非公共下水道
・水環境の管理
・ロマ人gens du voyage受入地域の管理
加えて、コミューン共同体は、コミューンに代わり、下記の二つの任意的権限を行使することができることとされている。
・まちづくり政策
・公共機関総合センターmaison de services au public(既出)の設置及び管理
また、都市計画制度における「広域一貫スキームSCOT」について、コミューンに策定義務があるにも関わらず未だに各地に未策定団体が見られる現状を踏まえ、今後は、コミューン共同体がこれを策定し、或いは策定に参画しなければならないものとされた。

他方、中堅都市部に置かれる広域行政組織である「都市圏共同体communauté d’agglomération (CA)」については、経済分野に関連する事業、道路及び駐車場、まちづくり政策における契約的措置に関し、コミューンから全面的に権限を移管するものとされている。

ところで、広域行政組織と構成コミューン間の権限の仕分けの基準として、「広域行政組織共通の利益intérêt communautaire」という概念がある。これに当てはまれば当該事項は、各構成コミューンではなく、広域行政組織の権限となるものであるが、この「共通の利益」への該当の有無について、現行制度では、メトロポールや都市圏共同体、大都市共同体など都市部におかれる広域行政組織においては「広域行政組織の議会が」(2/3の特別多数により)決するとされているのに対し、コミューン共同体については、「構成コミューンが」(賛成コミューン数により)決することとされ、実質的にハードルを上げている。今回の法案ではこの点に関し、コミューン共同体についても、各コミューンではなく広域行政組織の議会で「共通の利益」への該当の有無を決するよう改め、広域行政組織の一体性の強化を図っている。
なお、上記に述べたように、今回の法案では同時に、コミューンから広域行政組織に「義務的に」権限を移譲すべき分野も少なからず定められているが、これは言わば「共通の利益」という概念そのものの介在する余地をなくし、広域行政組織への移管を法の規定により自動的に進めようとする措置と言うこともできる。

コミューン間広域行政組織及びその構成コミューンは効率的行政の実現のため内部管理業務等を担う「共同事務局service commun」を置くことができるが、コミューンの職員の権利・契約内容は継続しつつ広域行政組織へ自動的な移し替えができるようにしたり、共同事務局に委ねられる職務内容をより明確に定義したりする等、こうした取組の円滑化に向けた措置が取られている。なお、この「共同事務局」は単なる合理化効果のみならず、メールの種々の意思決定のサポート役にもなり得るものである。

コミューン間広域行政組織及びその構成コミューンの組織共同化の促進に向けて財政的インセンティブを与えるため、課税型コミューン間広域行政組織向けに、共同化した支出の割合に着目した「機能統合指数coefficient d’intégration fonctionnelle」を導入することとされている。

⑦都市計画の強化
都市のスプロール的拡大を防ぐため、コミューン共同体CC及び都市圏共同体CAはコミューンに代わって地域都市計画プランPLUを策定することとされている。他方、コミューンは引き続き建築許可の発行権限を有する(法施行後6か月後から適用)。
なお、地域都市計画プランPLUとは、地域整備の全体計画を提示する都市計画文書で、土地利用に関する一般ルールが定められているものである。コミューン及びその広域行政組織により策定される。地域整備計画、及び、持続可能な開発計画の二部構成となっており、地域のヴィジョンを明らかにするものである。異議申し立ては認められていない。
今回の法案では、コミューンの境界を超えた地域整備を可能とするため、個々のコミューンではなく、コミューン間広域行政組織レベルで策定することを義務付けることとしている。

(パリ事務所長 黒瀬敏文)