パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

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オランド分権改革を追う(2) ~地方行政の刷新とメトロポールの確立に関する法律案①~

これから数回にわたり、本年4月10日に閣議決定された分権関連3法案を逐次紹介する。
今回はそのうち、1本目の法案「地方行政の刷新とメトロポールの確立に関する法律案」のうち、各種自治体に割り振られている権限の体系化にかかる部分である。

〔2013年4月10日閣議決定当初の法律案の概要〕

1 地方行政の刷新とメトロポールの確立に関する法律案 Projet de loi de modernisation de l’action publique territoriale et d’affirmation des métropoles

(1)権限の体系化に向けた方策

①一般権限条項clause de compétence généraleの復活
各種地方公共団体が市民サービスの向上に力を発揮できるよう、2015年1月1日に廃止とされていた州・県の一般権限条項を、地域ガバナンス協定締結を条件に復活させる。
ここで、一般権限条項とは、地方自治体総合法典に、地方公共団体の権限について、「コミューン議会、県議会、州議会は、それぞれの議会での審議を通じて、各自治体に属する事務を処理する」旨を包括的に定めているものである。2010年12月16日法は、権限の輻輳の解消のため、2015年1月1日から県と州については一般権限条項を廃止する旨を定めているが、新法案では、関係自治体間で、次に述べる「地域ガバナンス協定」を締結することを条件に、一般権限条項を復活させることとした。

②「リーダー自治体」、「地域行政活動調整会議」、「地域ガバナンス協定」
一般権限条項を残す代わりに、異なる階層の地方公共団体間の権限輻輳の解消に向けて今般の法案が取った手法は、各州に、国・地方公共団体をメンバーとする「地域行政活動調整会議」を設置し、メンバー間で「地域ガバナンス協定」を締結、さらにその具体的内容は「分野別実行計画」に定めることとし、当該計画の策定は、それぞれの分野ごとに定める「リーダー自治体」が全体の調整をしつつ責任をもって策定する、というものである。

・「リーダー自治体」
各階層に「リーダー自治体chef de file」としての立場が割り振られる分野は以下のとおりである。
-州には、経済発展・交通網整備の分野で、リーダーとしての立場が与えられる。
-県には、社会保障、社会環境の改善développement social、市民の自立、観光、電子化の推進、地域の連帯の分野で、リーダーとしての立場が与えられる。
-コミューンおよびその広域行政組織については、環境(大気)保全qualité de l’air、市民の移動環境の整備mobilité durableの分野で、リーダーとしての立場が与えられる。

・「地域行政活動調整会議」及び「地域ガバナンス協定」
各州には、国および各種地方公共団体が担う公共政策を簡素化・可視化するため、「地域行政活動調整会議conférence territoriale de l’action publique」が設置される。
各々の地域行政活動調整会議では、「地域ガバナンス協定」が採択される。この協定は、それぞれに異なる権限を付与された複数の行政主体が、地域の実情に即した効果的な事業の実現に向けて協力をするための調整の手続きなど、言わば「連携の大枠」を定めるものである。複数自治体による共同事務局の設置やワンストップ窓口の開設、補助金の整理統合等も盛り込まれることが想定されている。

そして、連携の具体的な内容は、地域行政活動調整会議での議論を経て、自治体間で策定する「分野別実行計画schéma d’organisation des compétences」に定めることとされている。
各州、各県は、(上記のとおり)自らがリーダーを務めると定められた権限分野についてはそれぞれの分野ごとに、この分野別実行計画を作成することが義務付けられる。
権限が複数の種類の自治体にまたがる場合(すなわち、特定の種類の自治体の専管的権限でなく、リーダー自治体の定めがある権限分野でもない場合)には、地域行政活動調整会議が、関係自治体と調整しつつ、当該州において分野別実行計画の作成を担う自治体を指定する。州・県が専管的権限を有する場合には、当該州・県が分野別実行計画を定める。

ところで、複数の公的主体が一つのプロジェクトに対し財政負担することを「複合財源調達financements croisés」と呼び、しばしばその効率性等の点から批判の対象とされるが、今回の法案では、地域ガバナンス協定を採択していない自治体は、その一態様である「補助金の兼用cumul de subventions」が禁止、即ち、州や県など複数の公的主体から同時に補助金を受けることができなくなり、また、事業費に占める補助金の割合の上限も通常認められる8割から7割へと減額される、といったペナルティが課せられる。
州会計検査院は、地域ガバナンス協定の改訂に際して、同協定の経費節減・合理化効果について評価を実施することとされている。

③補助金を通じたペナルティの適用範囲
地域ガバナンス協定および分野別実行計画が採択された場合であっても、この(州・県が定めた)分野別実行計画を順守しないコミューン、県、州およびその広域行政組織は、関連するプロジェクトについて、これらの州・県のいずれからも補助金を受けることができない。即ち、「補助金の兼用」のみならず「複合財源調達」そのものが禁止される。

(パリ事務所長 黒瀬敏文)