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パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

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オランド分権改革を追う(1)

オランド政権の新分権改革3法案が動き出している。地方との慎重な対話を重ねたこともあり、法案はなかなか難産であったが、ようやく今年4月10日閣議決定され、オランド政権の目指す分権の姿は一応全容を現した。法案が上院・下院の往来を繰り返すフランスでは、最終形がどうなるかはまだ分からない。しかし、審議は全てオープンである。それを追うことで関心事項のコアがどこにあるのかを探ることも可能だ。これから継続的にオランド流分権改革の帰趨を追うことにしたい。

フランソワ・オランド大統領は、昨年10月5日、上院の「地方の民主化に係る“三部会États généraux”全体会合」に出席し、地方分権改革に関する今後の方向性についてその考え方を表明している(その概要は昨年10月の拙稿参照)。

その中で大統領は「国際競争に勝ち抜く国とは、同一のプロジェクトに全ての主体を連携させることができる国である」とし、今般の地方分権改革の理念として、信頼性、明確性、一貫性、民主性の4つを掲げている。
国・地方あるいは地方間の責任配分を明確化することで行政を簡素化し、決定の場を市民に近接させ、ひいては効率的で低コストな行政を実現するという、上記4つの理念に根差した国・地方を通じた行政の刷新こそが、今回の「新地方分権改革」の目指すものということになる。
そして、こうした改革のさらに先には、地方の発意を促し、自治体を信頼することで、経済成長や雇用の拡大、地域間格差の解消を図るという、まさに「地方発のフランス再建redressement de la France à partir des territoires」の実現が据えられている。

こうした考え方に立ち、本年4月10日、地方分権改革に関する3つの法案、即ち「地方行政の刷新とメトロポールの確立に関する法律案」「経済成長と雇用拡大に向けた州の強化及び地域間格差解消の促進に関する法律案」「地域の連帯及び民主化の促進に関する法律案」が閣議決定され、直ちに上院に提出された。しかし、法案を巡る状況は複雑である。

前政権によるいわゆるサルコジ改革に係る法案は2010年12月に成立している。その中には、メトロポールのように既に施行に移された事項もあれば、州県兼任議員制度のように施行前(かつ今回の3法案の提出前)に廃止されたものもある。今回の3法案で実現しようとしているものが何なのか、有体に言えば、ドラスティックな改革に見えて、実は単にサルコジ改革を換骨奪胎あるいは後退させただけのものに過ぎないのか、それともよりイノベーティブなものなのか、一見しただけでは分かりにくい。

また、来年3月にはコミューンの全国統一選挙が控えている。そのため、コミューンをできる限り刺激したくない、という心理が国会には働く。同年9月には上院議員選挙も予定されているが、これは選挙民の大半がコミューンの首長という間接選挙であるだけに、上院が神経質になるのも当然である。
事実、3法案は憲法の規定に従い上院先議で国会に提出されたものの、7月現在、審議は一つ目の法案について行われているのみで、2本目、3本目の審議のメドは立っていない。そればかりか、既に6月6日に上院で可決された1本目の法律案の中身を見ても、かなり大幅に修正が加えられ、総じてマイルドなものに改められている。ただし、フランスの場合、法案は第一読会、第二読会…と二院の間を法案が往復するため、今後どのような方向で修正が施されるかは予断を許さない。

分権改革法案のこうした帰趨を今後追って行くための基礎資料として、まずは4月に閣議決定された当初の法案の概要を、何度かに分けて紹介させていただくこととしたい。その上で、国会審議での主要変更点なども踏まえつつ、今後、適宜内容をアップデートしていくこととしたい。

 

(パリ事務所長 黒瀬敏文)