パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

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ニュイ・サン・ジョルジュの観光施策について

2013年3月15日から17日にかけて山梨県と合同で、ペイ・ニュイ・サン・ジョルジュ観光局へのヒアリングおよび各種イベント視察を行いましたので、その様子を報告いたします。

○視察の経緯
今回、観光施策や地場産業振興の参考とするため、3月15日~17日にニュイ・サン・ジョルジュ市[1](以下、ニュイ市)にて行われたワイン、マラソン、農産物等を複合した多面的なイベントの会場をワイン等の地域資源が類似している山梨県と訪れ、合同で調査を行いました。なお、ニュイ市は、山梨県笛吹市と姉妹都市を締結しております。東日本大震災の際には、復興支援の寄付を募っていただき、それらは笛吹市を通じて福島県相馬市に届けられています。

○アソシエーション[2]で運営する観光局
ニュイ市の場合、観光施策についてはペイ・ニュイ・サン・ジョルジュコミューン共同体[3]という広域行政体に権限が移譲されており、その広域行政体によりペイ・ニュイ・サン・ジョルジュ観光局(以下、観光局)が設置されています。観光局は、アソシエーションの形態で運営されており、フランス国内の他地域でも同じ運営形態を取っているところが多いようです。観光局の主な役割としては、観光客向けにシャトーをはじめとする観光情報の提供や、歴史的建造物のガイド斡旋、各種イベントの側面支援などが挙げられます。観光局の話によると、発足当時は、ワイナリーも観光局設置の効果について冷ややかな反応で、必ずしも最初から順風満帆とは行かなかったとのことですが、地道な努力と実績の積み重ねにより観光局が定着し、今ではワイナリーよりイベントで使用するワインが提供されるなど連携を深めているとのことでした。また、観光局の大切な役割として、イベントごとに行われるアソシエーションとの調整が挙げられます。あくまで、イベント事業の実施主体は各々のアソシエーションであり、観光局は裏方として、イベント広報、問い合わせ対応、ホテルのアレンジ等を担当するという明確な役割分担がなされています。これらの観光局の地道な仕事や、人・モノ・カネ・情報を効果的につなげてコーディネートする役割が、観光振興に大きく貢献していることがよく理解できました。

表1 ペイ・ニュイ・サン・ジョルジュ観光局概要

対象地域

ペイ・ニュイ・サン・ジョルジュコミューン共同体

組織形態

アソシエーション

事務局員

3名。うち専属ディレクター1名、コミューン共同体議員2名

ボランティア数

80名

年間予算

年間予算210,000ユーロ。
125,000ユーロ→コミューンの負担、60,000ユーロ→企業からの広告収入、25,000ユーロ→土産物商品の販売手数料。

組織変遷

前身はニュイ・サン・ジョルジュ観光局。
コミューン共同体の設立により、観光分野の権限がコミューン共同体に移管され、現在の形となった。

 

○まち案内は、住民が主人公
次に、観光局で実施している「町のアンバサダー制度」を紹介したいと思います。この制度は、地元住民にまちの歴史や建造物をよく知ってもらい、その人たちをアンバサダーとして任命し、パスポートを授与するというものです。アンバサダーはパスポートがあるので施設の入場は無料であり、本人にとってもメリットを感じられるようになっています。その他、グリーターという制度があり、例えば、宗教的建造物をよく説明できる修道院の方などをデータバンクに登録して、お客さんの要望に応じて、観光局が間に入ってコーディネートする仕組みになっています。このようにそれぞれの強みを持っている人材を住民の中から発掘し活用することにより、まちの歴史を住民自らの力で伝える体制が出来上がっていました。

〇ワインオークションを核としたイベントの実施
3月15日~17日はニュイ市における1年で最も大きな催しがある期間でした。それらは、市主催のオスピス・ド・ニュイのワインオークションを中心として、ワインの試飲・販売会、地元の農産物展示販売、チョコレートの展示販売、そしてセミマラソンというように複合的に開催されており、幅広い年齢層、多様な志向を持った人々が十分楽しめる3日間となっていました。3日間全体での参加者数は8,000人程となり、イベント全体による経済効果は、ペイ・ニュイ・サン・ジョルジュコミューン共同体全体で2,800万ユーロ程[4]になるとのことです。最初にイベントの核であるオスピス・ド・ニュイのワインオークションについて説明します。オスピスというのは、日本でいう養護施設のようなもので、現在は老人ホームの役割も果たしています。その需要の高まりに応えるために、さらなる拡張が必要になっています。そして、このオスピスが独自にブドウ畑を有しており、そこで栽培されたブドウを使用してワインが作られます。そして、今回のワインオークションにて出品され、そこで得た資金で市はオスピスの改善、改築が可能になるというものです。このオークションは今年で52回目を数えます。ニュイ市としては、この最大級のイベントに際して姉妹都市を招待し、交流をしています。また、今年はオークションにかけられるワイン1樽の収益が、ソニア・ローラン氏[5]の主催するルワンダへの国際協力に取り組むアソシエーションに送られることになっており、彼女の参加は、オークションに華を添えるものでした。毎年1樽はこのように社会貢献に捧げられています。

〇セミマラソンについて
次に、16日に開催されたセミマラソンについて説明します。このマラソンは、FFA(フランス陸上フェデレーション)が年間に開催する地方マラソンの一つです。12年前より前観光局長の発案により始まり、実行委員会(アソシエーション)によって運営されています。このマラソンの特徴として、有名なワイン畑の間を走る、ワイン好きにはたまらないコースであることが挙げられます。地元の参加者が多いため、このマラソンの経済効果はそれほど大きくないとのことでしたが、前述したワインオークションイベント等への相乗効果を狙っており、マラソン参加者が他のイベントに参加し、そのリピーターになることを狙っています。また、マラソンイベント成功のコツとして以下のポイントを挙げていました。
①   オリジナルで魅力的なコースがあり、楽しいこと。
②   マラソンににぎわいをもたらす仕掛け(著名なゲスト、音楽等)が充実していること
③   組織がしっかりしていること(ボランティアのモチベーションが高いことが成功の元)
④   毎年イベント後に反省会を実施し、翌年の運営に着実に反映すること
⑤   予算化の裏付けがあること

表2 セミマラソンの概要

運営主体

マラソン実行委員会(アソシエーション)

参加者

2,200人(適正規模としておおよそ2,500人を上限としている)

参加者内訳

60%が地元もしくは近隣からの参加。40%が外部からの参加。

予算

80,000ユーロ

ボランティア数

200人

景品

オリジナルTシャツ。完走者にはワインをプレゼント。

入賞者には別途ワインをプレゼント。賞金はなし。

 

〇今回の視察を通して学んだこと
今回の視察を通して、主に4つのポイントを学ぶことができました。

①   まずは住民が参加し、楽しむこと
観光客を呼び込むイベントの前に、まずは住民が参加して楽しむイベントであること。それが外部の人をも呼び込むことになる。

②   ボランティアの活用
イベントは住民のボランティアをうまく活用し、彼らのモチベーションを高めることが重要。また、毎年同じメンバーのボランティアが継続的に関わることにより、スムーズに運営ができることもポイント。

③   石の上にも三年
イベントには成功までに3年(3回)くらいの時間をかけることが大事。決して1年で結果を出そうとしないこと。また、改善のために、アンケートや反省会を実施し、そのイベントを次も続けるかどうか冷静に判断することも必要。
イベントは様々な人の志向を考慮して、複合的に行うのが効果的。ただし、ニュイ市の場合も最大の行事であるワインオークションから徐々に増やしていった。

パリ事務所では、地方自治体の国際的活動が多様化している状況に対応し、フランスでの行政視察や各種調査等の支援を行っております。フランスでの事業展開をお考えの際にはぜひお気軽に当事務所までご連絡ください。

(パリ事務所所長補佐 原田知也 群馬県富岡市より派遣)



[1] フランスのブルゴーニュ州コート=ドール県のコミューンで、人口5,600程。良質なワインの産地として有名。

[2] フランスにおいて1901年法(アソシエーション法)において規定されている非営利組織の形態の1つ。

[3] ニュイ・サン・ジョルジュを含む25のコミューンで形成されているコミューン広域行政。

[4] クロ・ヴジョーという城でのイベントがメインの収入源であるとのこと。この城は、12世紀から1790年代までシトー派の修道会がワインづくりを営みながら所有していた歴史的建造物。

[5] 2000年のミス・フランス、1999年ミス・ブルゴーニュ。彼女はミス・フランスとなった後に、ルワンダの虐殺で孤児になった子供たちのための学校づくりを目的とした基金(アソシアシオン・マイシャ・アフリカ)を作り活動をしている。