パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

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高知豪雨の経験をフランスへ

情報発信の一つとして日本の先進事例等の情報を発信することを目的に、フランスの自治体で開催されるセミナーやフォーラム等へ、日本の自治体から当該分野の専門職員を招へいする事業を2005年度から実施しています。最近では、奈良県における「世界遺産の保存と活用に関する取組み」(2010年6月)、北九州市における「地方自治体における環境対策」(2011年5月)に関する情報発信を行ってきました。

今年度については春と秋の2回開催し、第1回は地方自治体幹部職員専門研修所(以下、「INSET」とする。)[1]アンジェ校と、第2回は同じくINSETモンペリエ校と連携しつつ、開催の運びとなりました(INSETアンジェ校での広島市における「自治体外交の意義と平和推進」[2]の事例についてはCLAIRメールマガジン vol.28(2012年6月12日)に掲載しています。)。

フランスにおいても様々な自然災害が発生していますが、地震や火山噴火は日本に比べて少なく、逆に、洪水・森林火災・雪崩・暴風などが大きな自然災害として取り上げられます。そこで、INSETモンペリエ校からの依頼を受けて、フランス自治体幹部向けのセミナー形式で実施されたシンポジウムの中で、日本からは、高知県から河川課課長補佐の竹﨑幸博氏にご参加願い、日本発の水害予防の取組みを知って頂くという狙いで、過去の高知豪雨の経験と治水対策について事例を紹介いただきました。11月26日に日仏3自治体合同で講演を行うことになり、フランスからは、洪水被害を教訓として都市基盤整備に力を入れているニーム市[3]と、シンポジウム開催地のモンペリエ市[4]とのあわせて2市から講演が行われました。

当日のシンポジウムは、「都市基盤整備と水害予防-高知県、ニーム市、モンペリエ市の経験から-」と題して、高知県の竹﨑課長補佐には、スライド32枚に及ぶ詳細な説明を行っていただきました。講演の主なポイントとしては、1998年9月の高知豪雨の被害状況を検証した上で、都市水害に対応すべく河川改修を行ったこと、覆土工法を採用して環境保全に努めたこと、住民に対して河川改修を実施した後でも浸水するおそれのある区域が残るという情報をマスコミ等に公表したことで、流域の防災意識の向上に役立ったとこと、さらに、庁内の部局を横断する組織として「流域協議会」を設置し、学識経験者や地元住民の意見も取り入れ、徹底的に議論を行い、総合的に治水を進めたとのことでした。

聴衆の多くからは、質問が相次ぎ、日本の自治体の政策に関する関心の高さを実感しました。質問の内容としては、治水対策の費用としていくらかかったか、新たな雇用創出があったのか、治水対策を実施するためのアイデアをどこから得たのか等、様々でした。また、住民の意識向上のために工夫できることはあるか等、非常に実務的な質問もあり、講演を実施したことに手ごたえを感じました。

また、翌日には、参加者とともに、ニーム市及びモンペリエ市の現場視察を行いました。ニーム市では、洪水被害を教訓として危機管理への対応を強化したことについて説明を受け、モンペリエ市では、市役所周辺の河川が氾濫した場合の対応について説明を受けました。日本からの講師でもある竹﨑課長補佐に意見を求める場面もあり、日仏間の取組みが比較でき、お互いにとって意義のある情報交換の機会になりました。

このように、パリ事務所では、自治体のフランスでの行政視察や各種調査等の支援とともに、フランス向けの情報発信事業を通じて自治体の先進的な取組みの紹介を行っています。フランスでの情報発信をお考えの際にはぜひお気軽に当事務所までご連絡ください。

(パリ事務所所長補佐  西村 高則)



[1]「地方自治体幹部職員専門研修所(INSET)」とは、地方公務員の職員採用試験や研修事業を計画・実施している国の公益法人である「全国地方公務員管理センター(CNFPT)」の一つの機関であり、自治体幹部職員を対象とした研修事業を行っている。フランス国内に4か所(アンジェ、モンペリエ、ダンケルク、ナンシー)の拠点がある。

[2] 「自治体外交」というテーマで、INSETアンジェ校から依頼があったため、「自治体外交の意義と平和推進」として、平和推進施策を世界に向けて展開・発信している広島市から、平和推進課長の柴田吉男氏にご参加いただきました。

[3] ラングドック・ルシヨン州ガール県のコミューン。古代ローマ時代の遺跡(円形劇場など)が多く残る地域としても有名。

[4] ラングドック・ルシヨン州エロー県のコミューン。ラングドック・ルシヨン州の州庁所在地かつエロー県の県庁所在地である。