パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

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パリの水道事業について

フランスでは、水道事業の運営主体は地方自治体であるが、その管理については、伝統的に民間委託(フランスの公役務の委託には、コンセッション(concession:事業特許)、アフェルマージュ(affermage:経営委託)、レジー・アンテレッセ(régie intéressée)、ジェランス(gérance)の4つがあるが、水道事業の管理委託は主にコンセッション方式で行われている。コンセッション方式では、受託者は委託者との契約によって、事業に必要な施設等を自ら設置することができ、一定期間公共サービスを提供し、利用者から直接徴収する利用料金を事業報酬としている。)されることが多くなっており、2008年時点では、上水道の71%、下水道の55%が民間委託されている。

○ フランスの水道事業
フランスでは、水道事業の運営主体は地方自治体であるが、その管理については、伝統的に民間委託(フランスの公役務の委託には、コンセッション(concession:事業特許)、アフェルマージュ(affermage:経営委託)、レジー・アンテレッセ(régie intéressée)、ジェランス(gérance)の4つがあるが、水道事業の管理委託は主にコンセッション方式で行われている。コンセッション方式では、受託者は委託者との契約によって、事業に必要な施設等を自ら設置することができ、一定期間公共サービスを提供し、利用者から直接徴収する利用料金を事業報酬としている。フランスにおける公役務の委託の詳細は、「自治体業務のアウトソーシング」(2005/5/1)第3章「フランス」参照。)されることが多くなっており、2008年時点では、上水道の71%、下水道の55%が民間委託されている。
この民間管理委託については、委託期間を20年に限定する1990年代のサパン・バルニエ法の影響で、フランスの多くの自治体では2010年代に契約期限を迎えることになっている。これまで、フランスの水道管理の委託業務についてはヴェオリア社やスエズ社といった国際的な大企業の寡占市場となっていたが、グルノーブル市の水道管理委託の見直しを先がけに、フランス国内では水道管理の在り方の見直しが検討されている。

○ パリ市の水道事業の概要について
2013年現在、事業主体はパリ市であり、パリ市の100%出資会社であるEau de Paris社(La régie autonome、いわば日本の公営企業)がその業務を行っている。
最近の動きを整理すると、それまでパリ市内の水供給(水道)の中の取水・浄水及び配水池までの送配水業務については、ヴェオリア社やスエズ社の資本が入っていたEau de Paris社によるコンセッション(1987年に民間資本の入ったEau de Paris社との間のコンセッション契約を締結し、契約が更新されてきた。)の形で行っていたが、2008年11月のパリ市議会における議決により、Eau de Paris社の民間保有分を全てパリ市が買い取ることで、2009年5月1日から再公営化された。さらに、各家庭への給水業務については、それまでセーヌ川を境にCompagnie des Eaux de Paris社(ヴェオリア社の子会社、通称CEP)とEau et Force- Parisienne des Eaux社(スエズ社の子会社、通称EF-PE)がアフェルマージュ契約(1984年から締結)の形によって行っていたが、2010年1月1日からはEau de Paris社が浄水・送配水業務だけでなく給水業務も併せて行うことを決定し、再公営化された。特に給水部分の再公営化に関しては、2008年の市長選挙前にベルトラン・ドラノエ市長が公約として宣言していたことで話題になった。当時は、水道料金の変動が激しく、市民の不満も高まっていたため、ドラノエ市長は自らの任期である2014年までの間、水道料金を急上昇させないことを約束した。
なお、また人口200万人以上の大都市の管理運営主体の変更ということで、世界的にも注目されたところであるが、水道事業を担当するパリ市のアンヌ・ル・ストラット副市長(当時)によれば、再公営化の利点について、株主配当や企業内留保に回ってしまう収益を、公営の場合はサービス向上のための再投資に回すことができるとのことである(自治体国際化フォーラム2012年1月号「地方自治体と国際水ビジネス」内の「フランスにおける水メジャーの動向とフランス国内の水道事業について」参照。)。
現在、パリ市では、取水施設から各家庭への供給口まで全体を管理しており、パリ市全体の使用量は平均55万立方メートル/日(市内)となっている。給水エリアはパリ市内全域である。
パリ市は人口2,125,000人を数えるが、実際、パリ市内には、留学生や外国人労働者、そして、多くの観光客がおり、一日あたりの水の使用者は300万人超とされている。一方で、水道の加入者は約93,500人となっている。パリ市では使用者である各家庭が個別に水道料金の請求書を受け取らない。パリでは各家庭が水道を使用しているが、実際の水道の加入者は、法人(一部、一戸建ての場合は個人)、組合、(低所得者向け)社会住宅管理会社である。加入者に対して請求書は送られている。

○ パリ市の水道料金の算定
まず水道水そのものの価格は、Eau de Paris社によると、3つの部分から構成される。①飲料水(上水)33.8 %、②汚水処理(下水)38.8 %、③税及び手数料(汚染対策や水源保全の費用)26.9 %である。
なお、パリ市の平均的な料金としては、2013年1月1日以降、3.1123€/㎥(税込)となっており、2012年は3.0163€/㎥(税込)であり、対前年比で約3.2%の値上がりとなっている。さらに、水道料金はメータ口径の大きさによって固定料金が異なっており、15mmから500mmまで料金は個別に設定されている。
水道料金(下水含む)は使用水量に係る従量制料金とメータ口径に係る固定料金の合計値によって決まる。一例として、2013年において、口径20mm、1月当たり20㎥(1年で240㎥)使用した場合の料金の試算については以下の通りとなる。

26.78 €× 1.055 + 240㎥ × 3.1123€ = 775.20 €
(口径20ミリの固定料金 + 使用水量に係る料金 = 水道料金(税込))

○ イル・ド・フランス州の水道事業の概要について
パリ市を除く首都圏(イル・ド・フランス州)については、自治体間で構成された水道組合であるイル・ド・フランス水道組合(Le syndicat des eaux d'Ile de France:通称SEDIF)が水道業務を担っており、2011年1月から新たに 12 年間の包括管理委託契約をヴェオリア社と、浄水、給水、料金徴収、施設の維持管理等を一括して委託する内容で、結んでいる(2011年当時の契約の主な内容は次のとおり。①委託期間:2011 年 1 月 1 日から 12 年間、②契約額:37 億ユーロ、③上水道料金の値下げ(平均単価 1.65 ユーロ→1.48 ユーロ)、④新たな管理方法の導入(配水履歴の追跡調査が可能なシステムの導入、各戸メータへの電子機器設置による水道使用量の遠隔管理、浄水場から水道網まで水道サービスを一元管理するセンターの設置等)、⑤SEDIF の投資負担割合の増(69%→80%))。

(パリ事務所所長補佐  西村 高則)