2012年全仏州連合総会における主要な発表の要旨(2)
2012年10月18及び19日にリヨン(Lyon)市(ローヌ=アルプ州、Rhône-Alpes)において、2012年の全仏州連合(Association des Régions de France、以下ARFとする。脚注参照。)総会が開催されましたので、総会中の閣僚の発言について報告します。
セシル・ドゥフロ地域間平等・住宅大臣(Cécile DUFLOT, ministre de l’égalité des territoires et du logement)の発言要旨
政府は、地域のために、地域と共に、地方分権を進める意向である。
大統領にとって、地域の平等のための政策は、財政再建と同様に主要な課題であり、地方分権はまさに地域の平等の実現を目指すものである。
社会状況が悪化する今日、地域によっては、貧困、失業の問題は深刻化する一方であり、地域格差も広がっている。このような状況が極度に偏った政治思想への傾倒をもたらすことはここ数年の選挙結果をみても明らかである。
従って全ての地域と全ての住民に関わる政策を実施することが重要であり、政策は以下の方向性を目指すものでなければならない。
•地域が発展を目指すことができる状況を作り出す(住宅、雇用等、地域の問題を解決するのみならず、状況の変化を先取りし、公共サービスの近代化を図る)。
•市民の生活圏の拡大を考慮に入れて地域の連帯を強める(持続可能な都市、均衡の取れた住宅建設、さまざまな社会階層の市民の共存等)。
•環境政策の転換(住宅のエネルギー効率改善、リサイクル、化石エネルギーからの脱却、バイオマス、地産地消、エコ資材等)
しかしながら政策の実施には財源が必要であり、それが不足する状況にあっては、財源の無駄遣いをなくし、各自の役割と優先課題を明確にし、競争するのではなく協力することが必要である。
マリリーズ・ルブランシュ国家改革・地方分権・公務員大臣(Maryse LEBRANCHU, ministre de la Réforme de l’Etat, de la Décentralisation et de la Fonction publique)の発言要旨
地方分権により州の権限が明確にされることは、国が自らの事務に専念できるようになることである。地方分権が国の改革に貢献するものであることは事実である。
分権は地方議員や自治体職員とともに、時間をかけて、あらゆるレベルでの協議に基づいて行う。
この30年間で行われた地方分権改革の成果について、改めて考え、今後の改革に繋げなければならない。
経済発展とイノベーションについては、フランスの生産力再建を推進するための15の誓約を含む国と州の共同宣言が9月12日に共和国大統領と州により採択された。これは州に中小企業に対する支援に関する全ての政策を移譲することで、州が経済発展とイノベーションに関して中心的な役割を果たすようにするためのものである。
また州は図書館、劇場等、フランスの身近な文化の発展のために約70億ユーロを支出している。
産業クラスターに関する権限の州への委譲、またクラスターが中小企業にもたらす効果、州が定める経済戦略は重要視するところである。
国としては、州とともに、フランスの経済再建のために検討および討議を重ねてゆくつもりである。
また国は当然地域の平等が確保されるように注意を払う。
大統領の10月5日の演説にもあるように、法案には中核都市(pôle métropolitain) に関する規定も盛り込まれるであろう。州と中核都市は相反するものではなく、手を携えて事務を行うべきものである。しかし農村地域も忘れてはならない。また県と州も補完的な関係にある。
それぞれの地域がなくてはならない存在であり、地域間の連帯こそが競争力の鍵となる。
法案作成にあたっては、政府は地方議員のアソシアシオンおよび労働組合と協議を図る。
州は職業税の改革により、税制上の自律性を失ったといえる。州に新たに権限が移譲されるにあたっては、その財源の確保が必要であり、政府は現在そのための検討を行っている。
先日の三部会において、大統領は地方分権と国の改革は同時に行われるべきであると述べた。政府は地方自治体が経済発展(従って雇用)、失業者の再就職、若年層の進路決定のためのサポート、社会福祉、エネルギー政策の転換等に重要な役割を果たすことを認識しており、従って地方分権が重要であると考える。
社会経済が危機的な状況にある現在、市民のニーズに応えるためには、地方自治体間の対立や、国と地方の対立はあってはならず、それぞれが補完的な役割を果たせるような制度が創設されなければならない。
(パリ事務所所長補佐 西村高則)