2012年全仏州連合総会における主要な発表の要旨(1)
2012年10月18及び19日にリヨン(Lyon)市(ローヌ=アルプ州、Rhône-Alpes)において、2012年の全仏州連合(Association des Régions de France、以下ARFとする。脚注参照。)総会が開催されましたので、総会中のARF会長、上院議長の発言について報告します。
アラン・ルセARF会長(Alain ROUSSET, président de l’ARF)の発言要旨
開会の挨拶及び州の今後の方向性について報告。
オランド大統領が地方分権で目指すものは、以下のものが挙げられる。
•民主主義の推進(地方自治体の権限は錯綜しており、市民にはわかりにくい。どの階層の自治体が何の事務を実施するのか、ということを明らかにすることで、共和国の制度がより一層明確なものになる。)
•効率性(権限配分が明らかになることで、自治体の責任が明確になり、効率性が追求される。)
•経費削減(権限配分が明らかになることで、異なる階層の自治体が同様の事務を実施することがなくなり、経費の節減につながる。)
今後ARFとしては、地方分権に関する法律が制定されるまで、その内容について注意深く追っていかなければならない。
公共投資銀行(Banque publique d'investissement (BPI)が設立されることになれば、州は地域における投資について重要な役割を果たすことになる。
地方分権は常に公共サービスを重視するものであり、従って国家公務員や省庁の付属機関の職員にとって脅威となるものではない。
ジャン=ピエール・ベル上院議長(Jean-Pierre BEL, président du Sénat)の発言要旨
先日行われた「地方の民主化に係る三部会」(États généraux、以下、三部会とする。)においては、共和国大統領が地方自治体の役割を強化し、新たな権限を委譲することを表明した。
現在フランスでは経済危機が企業閉鎖や失業の増加等の問題をもたらしており、社会状況は悪化している。このような状況で政府は公共財政の建て直しを図っている。そのために国の税制度と整合性の取れた、公平で抜本的な税制改革が必要である。
州はサルコジ政権下の職業税改革で税収を失った。公共投資の70 % は地方自治体によるもので、国の経済および雇用に大きく貢献している。州による施設整備のための投資額は100億ユーロを越える。
投資の資金調達には地方債の発行が必要となるが、現在長期的な計画の実施のための、資金調達は非常に難しい。
デクシア銀行の破綻後、バンク・ポスタル (Banque postale) による長期貸付が行われることとなったが、融資資金が十分ではないため、地方自治体に対する融資を行う公的機関の設立が望まれる。
大統領は「地域に関するハイレベル協議の場」 (Haut conseil des territoires) の設立を提案したが、同協議の場において国と地方議員の間で、財政に関する事項を定める、5年間を期限とする信頼・責任協定が締結される。
三部会では、約2万のアンケート票が寄せられ、県レベルで開催された会合には約25,000人の議員が参加した。
三部会では、以下の6つの点について、その実施の必要性が明らかにされた。
•国と地方自治体の対話と信頼関係の強化の必要性(「地域に関するハイレベル協議の場」がその役割を果たす)
•更なるイノベーションと実験的試み
•権限配分の明確化(国の制度改革と地方分権推進の同時実施)
•異なる階層の自治体の連携(大統領は「地域ガバナンス協定」を提唱)
•国の基準の削減
•地方議員の身分の改善
※ ARFの概要
州議会議長会を母体に1998年に発足。海外領土まで含めたすべての州を組織している。州の立場を代表し、州という地域単位についての理解を広め、地方分権の一層の拡充強化を図り、調査研究や州間の情報交換を活発にすることを目的としている。会長、副会長、幹事長、財務幹事が置かれており、総会と理事会のほか、国際協力など専門的事項についてはテーマ別作業部会が検討を重ねる。会員からの拠出金により運営されている。
(パリ事務所所長補佐 西村高則)