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パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

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財政問題に関する大都市市長会の関心事項と予算特命大臣の回答

今後、フランスではオランド政権下での分権の動向が注目を浴びることになる。そこで、順次、分権をめぐる動きをBlogの形でフォローしていきたい。

7月4日の大都市週報Grandes Villes Hebdoは、大都市市長会Association des Maires de Grandes Villes de Franceから提出された財政問題に関する質問と、それに対するジェローム・カユザック予算特命大臣(=副大臣)ministre délégué chargé du Budget, Jérôme Cahuzacの回答について報じている。

今後、フランスではオランド政権下での分権の動向が注目を浴びることになる。そこで、順次、分権をめぐる動きをBlogの形でフォローしていきたい。

7月4日の大都市週報Grandes Villes Hebdoは、大都市市長会Association des Maires de Grandes Villes de Franceから提出された財政問題に関する質問と、それに対するジェローム・カユザック予算匿名大臣(=副大臣)ministre délégué chargé du Budget, Jérôme Cahuzacの回答について報じている。

去る6月25日、政府は複数年予算と2013年予算法案に関する公式見解を記者発表した。そこでは、「国からの財政支援に関し、2013年からは、地方公共団体にも国と同様の努力が適用される」とされている。

この「努力」の性格や、大都市財政に関する政府の立場を明らかにするため、大都市市長会として5つの質問を提出したもので、同月27日、各質問に関し、カユザック特命大臣からミシェル・デストMichel Destot会長(グルノーブル市長・国民議会議員)ら代表団に対して回答がなされた。その内容は以下の通り。


【1 「努力」概念の射程は? 国からの交付金dotations凍結の継続やさらなる減額を意味するのか?】

特命大臣からは「地方公共団体に求められる国と同様の努力」とは、国から地方への交付金の規模の維持を意味する、との明快な回答があった。

これは従来からの文脈を考えれば非常に重要である。すなわち、4月に前サルコジ政権が欧州に提出した財政安定化プログラムでは、2016年までの国の交付金の引き下げが盛り込まれていたからである。

国から地方への種々の交付金全体をマクロ経済指標に連動させて決定する総枠enveloppe norméeの適用範囲の変更の可能性については、特命大臣から、FCTVA※は引き続きこの総枠の枠外とすることを首相に提言する、との発言があった。

※FCTVA:Fonds de compensation de la TVA
地方公共団体が支払ったTVAを国が一定ルールで補填するもの。


【2 国から地方への交付金dotationsの減額、即ち地方間の財政均てん化péréquationの財源の削減が念頭にあるのであれば(注:1の回答で否定はされているが)、企業付加価値税CVAE※の現行の減税措置の見直しに伴い捻出される国の増収分を、地方の財政均てん化財源に回すべきではないか。】

大都市市長会としては、財政状況の悪化に伴い地方間の水平的な財政調整が極めて困難になる中で(注:特に財源拠出側の大都市にとって)、国の財源による財政調整の仕組みを拡充させるため、CVAEの減税措置見直しに伴う捻出財源の活用について大臣の見解を質しておきたいところであった。

特命大臣は、財政均てん化は地域間の不均衡の緩和のためにのみ行われるべきであり、(ある団体の財源を財政調整名目で他団体に回させることを通じた)地方の歳出抑制の道具とされてはならないと述べた。同時に、「財政均てん化が全てを解決すると考えることは止めるべき」と述べ、地方分権第3幕においては、財政均てん化についてのさらなる抜本的な検討が必要であると指摘した。

2013年の予算法に盛り込まれることが予想される市町村間財政調整基金FPIC※の廃止(clause de renvoyure)は、ほっと一息と言うに値するだろう(2012年の予算法では、FPICは1500億ユーロ→3600億(2013年)→5700億(2014年)→7800億(2015年)→2016年からは市町村税収の2%、と拡充することとされていた)。(注:水平的財政調整の財源拠出側たる大都市として廃止は望ましいこと。)

ただその一方で、特命大臣は職業税taxe professionelle廃止の弊害のうち大きなものについては是正が必要で、工場の立地地域、とりわけ汚染の危険性の高い地域sites Sevesoが職業税の廃止によって不利益を被らないよう何らかの措置を講ずる必要があるとした。

CVAEの軽減措置の見直しについては、特命大臣は否定的な見解であった。これは、同氏が他方で企業の競争力向上戦略を法案に落とす作業を進めている最中であるだけに、政府として影響を受ける企業との論争開始を望んでいないことが背景にある。

※CVAE:企業付加価値税Cotisation sur la valeur ajoutée des entreprise
州・県・コミューンに配分される地方税で、企業不動産税CFE(cotisation foncière des entreprises)と共に、職業税の廃止に伴い導入された地域経済貢献税CET(contribution économique territoriale)を構成する。付加価値を課税標準とするが、売上高50万ユーロまでの企業についてはゼロ税率とするなど一律の減税措置が多分に盛り込まれている。ただし、この50万ユーロまでの減税措置は国によって補填されることになっている。また、各団体の税収の25%は基金として供出され、州・県に財政需要を基準として再配分される。

※FPIC:市町村間財政調整基金Fonds de Péréquation des ressources Intercommunales et Communales
国の基金を通じて、富裕団体から貧困団体へと財源を移転する水平的財政調整の仕組み。職業税の廃止に伴い、2012年に導入。職業税時代は、FDPTP(fonds départementaux de péréquation de la taxe professionnelle)やFSRIF(fonds de solidarité des communes de la région d’Île-de-France)により県内、州内(イルドフランス州のみ)の市町村間の水平的財政調整の仕組みはあったが、国の基金を通じた全国規模での市町村間調整の仕組みの導入は初めて。2011年に県間の調整制度DMTO(fonds de péréquation des droits de mutation à titre onéreux)が導入されたのに引き続いての措置。


【3 地方の「責任」の強化が(大統領の公約等に)謳われているが、これまで繰り返されてきた「地方税の交付金化」の歴史に終止符を打つということか。】

大統領選挙の間に言及されてきた「中小企業に係る企業不動産税CFEの将来における軽減措置」を念頭に、大都市市長会からは、当該軽減措置は、これまで繰り返されてきたように、地方税を引き下げ交付金に振り替えるというこれまでと同様の措置に帰結することにならないか、懸念が示された。

特命大臣からは、今後年末までに提出される予算法において、地方税を交付金に移行させることにつながるようないかなる措置も検討の俎上に上がっておらず心配無用である旨の発言があり、地方公共団体の税制の自主決定権principe d'autonomie fiscale des collectivitésに対する自身の拘りについて理解を求めた。


【4 財源を凍結するのであれば、同時に、地方に次第に重くのしかかるようになっている「節操のない義務付けincontinence normative」を打破し、地方の歳出についても凍結ないし削減できるような措置をとる必要があるのではないか。】

大都市市長会は、交付金の凍結は、歳出とりわけ国の義務付けに起因する歳出の凍結と連動するべきと問題提起。特命大臣はこうした認識を共有しつつ、「節操のない義務付け」により地方の予算が強いられている経費は2011年だけで7.6億ユーロに達すると述べた。なお、この「節操のない義務付け」という言葉は、ロワール・エ・シェールの上院議員ジャック・グルノーが、地方公共団体に適用される諸基準の簡素化を図る法案に関する報告書において用いた表現である。

大都市市長会としては、この報告書は本来各省が共有すべきものであることから、検討の場mission dédiéeを設置するよう提案した。特命大臣は、場合によっては種々の全国議員連盟とも連携しつつ、アンヌーマリー・エスコフィエ地方分権特命大臣に当該提案についてつなぐ旨を示唆した。

なお、基準の普及で一役を担っているスポーツ連盟に関して報告書を作成するよう、ヴァレリー・フルネイロン教育・青年・スポーツ大臣への働きかけを早々に行うことも有意義と考えられる。


【5 地方投資公庫Agence de financement des investissements locauxについて、各省の協力のもと法案を準備し、年末まで国会で検討を進め、その実現をリードして欲しい。】

地方公共団体が深刻な信用不安に直面する中、特命大臣は、こうした状況克服のため多様な解決策を用意すべきとの分析に理解を示すとともに、政治家により、大都市市長会も加わる形で、地方投資公庫の実現に向けた運動を行うことの正当性について認めた。

アドホックな公施設法人を創設したとしても、暗黙のものを含め何ら国の保証を何ら受けられるものではないことから、こうした公庫の最大限早期の実現に大いに賛成である旨、特命大臣は明言した。

(パリ事務所長 黒瀬敏文)