フランスの地方都市におけるミニスタージュ2026
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クレアパリ事務所では、日本の地方自治体から派遣されている職員がフランスの地方自治体に数日間滞在し、地方自治体の行政構造や文化・観光政策、公共事業等に係る業務を学ぶ短期滞在型研修「OJT型ミニスタージュ」を実施しています。2025年度も、3つの自治体(オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ州、カンヌ市、ガール県サン・ジル市)において4人の所員が数日間にわたるミニスタージュを実施しましたので、以下実施順にその概要をご紹介します。
1 オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ州 報告者:辻 歌織(愛知県 ※オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ州と友好交流及び相互協力に関する覚書を締結)
2025年9月11日~12日まで、リヨンにあるオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ州庁舎を訪問しました。私の派遣元である愛知県と交流のある経済分野、特にイノベーションの推進というテーマに関連して、滞在中の2日間で8つの部署・機関と面談を行い、それぞれの役割や事業内容を詳しく伺いました。州の経済戦略の策定の背景から製造業をはじめとする戦略分野に焦点を当てた支援の内容、今後の取り組みの展望や課題まで、幅広いトピックを州政府における様々な角度から体系的に学ぶことができました。
視察を行った、デジタルや製造業関連分野の教育機関及び職業訓練機関、企業等が入居する「州デジタルキャンパス(Campus Région du Numérique)」は、イベントスペース、研究・イノベーション施設、地域のクラスターやビジネスをサポートするネットワークオフィスを兼ね備えており、様々な組織や、学生から社会人までのあらゆる個人が恩恵を受けられるサービス構造となっていました。日本の自治体においてもこうしたイノベーションを後押しする複合施設の導入は行われていますが、対象分野を設けることによって、州の強みを活かしたより効率的な投資が実現されていると感じました。
さらに、日本とフランスの仕事における慣習には大きな差異があることは理解していましたが、実際の現場を訪れて職員の方々と交流できたことで、これからのフランス自治体との業務においてより具体的なイメージを持ちながら対応することができると感じています。最後に、多忙な中、快く訪問を受け入れてくださった職員の皆様に深く感謝申し上げます。
2 カンヌ市 報告者:福島 正一(静岡市 ※カンヌ市の姉妹都市)
2025年11月、私の派遣元静岡市の姉妹都市カンヌ市において、ミニスタージュ研修を受け入れていただきました。日本の地方行財政制度との相違は興味深く、また、直接の議論や質疑応答によってのみ得られる現場の実務感覚を、新たな視点をもって身につけることができた貴重な機会でした。
カンヌにおいて特筆すべきは、MICEに特化した施設であるパレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレが年間を通じて高い稼働率で運営されており、2025年の79件の業務イベント、340日の稼働日数、38万人の認定参加者、ならびに89件の文化行事(計168件)であり、市の経済活動にとって大きな柱となっています。一方で、海岸線の維持や海浜保養地として整備されたインフラの保全および更新といった、カンヌ特有の都市的特性に結びついた大きな恒常的支出にも対応しなければならないことについて説明を受けました。限られたリソースをコントロールしながら、プロジェクトに優先順位を付し、そして組織効率を継続的に改善しながら財政規律を保つ努力は印象的でした。
また、世界的観光都市として、民泊など滞在の形態が多様化する状況の中で、観光振興と生活環境および居住環境の保全を両立させるという課題に直面しており、さらには災害対応において、市の危機管理部は多くの来訪者を受け入れる都市としてその体制を強化しながら、市民だけではなく観光客にも対応するさらなる取組を進めており、当日は市役所前の広場で市民・観光客向けの啓発ブースにおけるPRの様子を視察しました。
最終日は、海洋熱エネルギーを利用した冷暖房・空調システムを視察し、持続可能なエネルギー政策へと転換するカンヌ市の現状を見ることができました。
市としての態様は、私の派遣元である静岡市と比較して環境および制度などあらゆる面で大きく異なるものの、特に観光政策および都市運営の分野において、多くの学びを得ることができました。
最後に、受入において丁寧な準備と温かい歓迎をいただいた、儀典・国際交流部長のアメリー・デルマ氏、財政部長のイヴァン・ベルモン氏、危機管理部長のヤニック・フェラン氏、ならびにその他のカンヌ市の責任者および職員の方々に、深い感謝の意を表したいと思います。また、海洋熱エネルギーを利用した冷暖房・空調システムについて詳細な説明をいただいたENGIE Solutions営業局長のアレクシス・タウフィク氏、ならびにその他の関係者の方々に、心から感謝を申し上げます。

(上)財政部長イヴァン・ベルモン氏と (下)危機管理部長ヤニック・フェラン氏
3 ガール県サン・ジル市 報告者:関野 昇平(石川県)・柳澤 仁実(福井市)
クレアの海外自治体幹部交流協力セミナーの縁で、サン・ジル市のヴァンソン・レイ事務総長に協力いただき、サン・ジル市とニーム・メトロポールでの2日間(2025年12月4・5日)のミニスタージュを実施することができました。
今回は、特に文化財政策や観光政策、大学との連携、自治体の広域連携などについて、担当する幹部職員から直接話を聞くことができました。地域開発に関する法的制約、国内外への観光PRなどは、日本にも共通する課題であり、今後の日本での実務で大いに参考にしたいと感じました。
特に大学との連携事業が印象深く、日本で大学連携というと学部生向けの教育重視の内容が多いですが、サン・ジル市では法律学専攻の大学院生と協力して法律的に実現可能な方策を探る非常に実利的・実践的な連携がなされていました。
また、観光分野での広域的な連携については、現在日本で取り組んでいる方向性を再確認することができました。日本の地方都市は知名度がまだ低く、周辺の観光地と連携して観光客の流れを作り出す必要がありますが、まだ取り組みは始まったばかりです。サン・ジル市とニーム・メトロポールではサンディアゴ・デ・コンポステラの巡礼路やローヌ川の運河など自分の自治体のコンテンツをいかに周辺地域と関連付けて一体的な誘客を図るかという話をさまざまな場面で聞くことができ、観光大国フランスでも広域的連携が重視されていることが確認できたことは今後の大きな励みとなりました。
最後に改めて、ご多忙の中今回のミニスタージュにお時間を割いていただいた幹部職員の方々をはじめ関係の皆様に深く感謝申し上げます。