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フランス版海外自治体幹部交流セミナー報告:オーブ県に学ぶ地域の価値の磨き方―鳥羽市

鳥羽市観光商工課 高浪七重

2025年11月6日から9日、SNDGCT(地方自治体事務総局長全国組合)及びCLAIR Paris(自治体国際化協会パリ事務所)の共同主催によるMini-séjour(短期研修)に参加し、フランス・グラン・テスト地域に属するオーブ県を視察しました。本視察は、ガストロノミーツーリズムをテーマに、フランス自治体の観光施策や地域運営を学び、今後の自治体政策に活かすことを目的としたものです。

鳥羽市では、2019年に市として初めてフランスへのトップセールスを実施し、海外誘客事業を開始しましたが、その直後に新型コロナウイルス感染症の拡大により、海外との往来が困難となりました。そうした中、クレア・パリのご提案により自治体幹部セミナーをオンラインで実施し、翌年には鳥羽市へ実際にお越しいただくなど、交流を継続してきました。こうした経緯のもと、今回、私自身がフランスを訪問し、現地自治体を視察する機会を得ました。

視察初日には、オーブ県観光局長と意見交換を行い「この地域にあるヒトとモノこそが財産である」という考え方を伺いました。新たな観光資源を生み出すのではなく、歴史、文化、食、自然、建造物といった既存の価値を磨き、伝えていくことの重要性が語られました。古くからの建物を大切に修繕しながら維持されている街を歩き、この考え方と実践が、訪れる人を引きつけると同時に、地域で暮らす人々の快適さも守っているのだと実感しました。また、同席されたアーティストによる作品を通じた地域価値の発信にも触れ、帰国後には日本で開催された個展を訪れる機会を得ました。

トロワ・シャンパーニュ・メトロポールやバール・シュール・セーヌ市を訪問し、広域行政の仕組みやコミューンの運営について意見交換を行いました。人口減少や少子高齢化、担い手不足といった課題は日本の地方都市とも共通しており、「投資したくなるまちづくり」「住み続けたくなるまちづくり」に向けた具体的な取組には強い関心を持ちました。文化施設や人材育成への投資を通じて、地域に人と資本を呼び込もうとする姿勢は、日本においても大いに参考になると感じました。

バール・シュール・セーヌ市長との面談では、交通の利便性に課題を抱える地域特性を踏まえ、中心市街地アドバイザーの起用による空き店舗対策や、住民の命を守ることを最優先に考えた医療対策など、具体的な施策について伺いました。時間があっという間に過ぎるほど充実した面談であり、市長の「住民の命を守る」という一貫した姿勢には強い感銘を受けました。

観光部門を担当する立場から見ても、「まちの価値を高めること」を軸とした考え方が、観光誘客の基盤となっていることを、今回の視察で確認することができました。

バール・シュール・セーヌ市
ガストロノミー見本市

また、自然公園やガストロノミー見本市の視察を通じて、環境保全と観光振興を両立させる考え方にも触れました。地域資源を守り、次世代へ引き継ごうとする姿勢は、全域が国立公園である鳥羽市とも共通する課題意識であり、日仏の自治体間で共有できるテーマであると感じました。

今回の視察を通じ、日仏の地方自治体が抱える課題は多くの共通点があり、同じ課題を持つ自治体同士が交流し、経験や知見を共有することはとても重要だと思います。今後、このような交流の場に、より多くの日仏双方の自治体が参加することを期待しています。

また、トロワ市滞在中、趣味である早朝のランニングの際に地域の方々と「Bonjour」とあいさつを交わしたことは印象深い経験となりました。地域の魅力や豊かさは、制度や施策だけでなく、そこに暮らす人々の姿やまちの空気感によって形づくられているのだと実感しました。

最後に、本視察の実施にあたり、綿密な調整とご同行をいただいたCLAIR ParisおよびSNDGCTの皆さまに、心より感謝申し上げます。多くの場面で女性が責任ある立場で活躍されている姿にも大きな刺激を受けました。本視察で得た学びを、今後の鳥羽市の国際化および観光振興に着実につなげていきたいと考えています。

バール・シュール・セーヌ市長と
シャンパンをつくる過程を視察
自然公園の視察
広域行政組合での意見交換