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日仏姉妹都市交流の歴史的プロジェクト~カンヌの空に静岡の花火が舞い踊った夏~

写真:🄫Clément Sauvage – 2025

「日本の風景を旅しているかのような感覚、さらには夢の国へ入り込んだかのような深い没入感がありました。…(中略)…この夜、私たちは花火芸術の真髄ともいえる瞬間を体験しました。」

-カンヌ出身の映画監督であるダヴィッド・ヘルツォーク=デシテス監督は2025カンヌ花火芸術祭の授賞式でイケブン-静岡(Ikebun Co.Ltd Shizuoka)チームの作品を高く評価しました。

2025年8月15日、世界で最も権威ある花火大会の1つであるカンヌ花火芸術祭に初出場したイケブンは、この年の最高賞「ヴェスタール賞」と「オーディエンス賞」の2冠を受賞する快挙を成し遂げました。大会史上、全ての花火が日本製のみで構成された作品は初めてのことであり、様々な技術的課題を経て実現した今回の静岡チーム出場は、カンヌ市との姉妹都市交流に新たな歴史を刻むものとなりました。

静岡市は、今日の観賞用花火の始まりの地と言われています。江戸時代(17世紀)にイギリス国王の使者によって、時の将軍徳川家康公が現静岡市にある駿府城から花火を眺めたとの記録が残っており、その後、この地で火薬の製造が許可されたことから、静岡は花火づくりの技術が発展していきました。

この歴史と文化は今も引き継がれ、静岡県域では数多くの花火大会が開催されています。中でも、「清水みなと祭り海上花火大会(le Festival pyrotechnique« Shimizu Minato »)」は、静岡市の夏を代表する伝統的な祭りの1つであり、イケブンが毎年プロデュースしています。

カンヌ花火芸術祭は、1967年からカンヌ国際映画祭の会場として知られるPalais des Festivals et des Congrès de Cannesが主催しており、毎年7月から8月にかけて、世界各国の花火師による音楽と花火が融合したショーが披露されています。カンヌ市内の地中海沿岸500メートルにわたり展開される作品は、世界の花火大会の中でも圧巻のスケールを誇ります。

この花火芸術祭への出場プロジェクトは、世界で模範的とされる日本製花火の披露を希望していたカンヌ側主催者の情熱と、フランスから「観光・文化」政策を学びたいと考えていた静岡市側の思いが一致したことを機に、2022年から協働で取り組むこととなりました。

日本では、漢字で花火を「火の花」と表現します。また、この花は平和のシンボルでもあります。高度な職人の手仕事によって、1つ1つに細かな仕掛けを施しながら、どこから見ても丸く開く精巧な球体として作られる日本の花火は、音楽の有無にかかわらず、1発ごとに感動や驚きを与えます。

一方で、欧州では花火玉の質に加え、スペクタクルとしての創造性や作品全体としての芸術性がより重視されます。今年のカンヌ花火芸術祭においても、6名の芸術分野の専門家によって、花火の独自性や品質、音楽の選曲、同期性及び全体的な芸術性の観点を基準に審査が行われました。

このように、日仏の花火芸術や作品作りに対するアプローチの大きな違いがある中で、日本チームとしての花火ショーを制作し、文化芸術の国フランスで競技に参加することは未知の挑戦でした。また、技術面においても、24年前から花火を欧州へ輸出するために必要となったCE認証を取得し、日本からフランスへ危険品を海上輸送することや、フランスの安全性基準に適合するために日本とは異なる打上機材を準備する必要があったことなど、このプロジェクトは約3年を要する壮大なものとなりましたが、カンヌ市、パレ・デ・フェスティバル、清水みなと祭り実行委員会(Comité d’organisation du Shimizu Minato Matsuri)、日欧州のパートナー企業、㈱イケブン、そして静岡市の全ての関係者が思いを1つにして協働し、ついに2025年競技の最終日にて、この夢を実現させることができました。

今回、「共鳴し合う音」をテーマにショーをデザインした㈱イケブンの上田昇弘工場長は、「日本古来の考え方として、様々な歴史や背景から生まれた音楽と花火にも魂が宿る。その生きた音と花火が響き合い、重なりあうことで生まれる美しさや、新しい感動を観ている方々に届けたい。」と作品への思いを述べました。また、その中には日本の美学である「散りゆく美しさ」や「去り際の美しさ」といった、情緒的で詩的な側面も盛り込まれています。この日本の伝統音楽と現代音楽のビートを組み合わせた演出は観客に強い感動を与え、「人生で最高の花火だった」と多くの方々が会場で感想を述べていました。

日本の花火は世界で最も精巧で華麗なものとして高い評価を受けていますが、人口減少や職人技師の高齢化により、今日では海外で日本の花火師が大会に参加することは容易ではありません。しかし、今回この「共鳴し合う音」がフランスの文化芸術に造詣の深い専門家やカンヌ市民の方々に評価され、日仏の芸術文化に対する共通の価値観を認識できたことは、両国の更なる相互理解につながったことでしょう。また、カンヌ市と静岡市が前例のない事業を時間をかけてともに成し遂げることで、自治体間の益々の関係性強化にもつながる記念すべき事業となりました。

静岡市とカンヌ市の姉妹都市交流の成果を背景に、日本の花火文化や伝統芸術がさらに世界へ広がっていくことが期待されます。

 

カンヌ花火芸術祭2025 イケブン_静岡チームの作品フルはページ下のリンクからご覧ください。

🄫Clément Sauvage – 2025
🄫Clément Sauvage – 2025
🄫Clément Sauvage – 2025
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