あなたが使う言語を選んでください

パリ事務所(クレア・パリ=CLAIR PARIS)は、日本の地方団体のフランスにおける共同窓口として、1990年10月に設置されました。

A+ A A-

フランスの地方都市におけるミニスタージュの実施

クレアパリ事務所 所長補佐 吉田 祐介
灰屋 英成
阿部  耕也
阿久津 佑介
永井 貴子

クレアパリ事務所では、派遣職員がフランスの地方自治体に数日間滞在し、地方自治体の行政構造や文化・観光政策、公共事業等に係る業務を学ぶ短期滞在型研修「OJT型ミニスタージュ」を実施しています。2024年度においても、4自治体(アジャクシオ、ナンシー、ナント及びプロムール)において5名の所員が数日間にわたるミニスタージュを実施しましたので、その概要をご紹介します。

1.アジャクシオの事例 報告者:吉田祐介(岡山県備前市)

 2024年9月24日から29日にかけて、ナポレオンの生誕地であるコルシカ島のアジャクシオ市で開催された日本関連のイベントにスタッフとして従事しました。わずか6日間ではありましたが、多くの地元住民の方々と一緒になり、ひとつの事業を作り上げるという貴重な機会に恵まれました。

 同イベントにおいては、会期中の来場者対応を経験したほか、設営から撤去に至るまでスタッフの一人としてかかわることができたため、日本とフランスの視点の違いや行政とのかかわりを間近で見ることができ、大いに参考となりました。また、これに加え、元EU外交官と意見交換する機会にも恵まれ、観光政策や住宅政策について知見を深めることができ、行政職員としての幅を広げることができたように感じました。

 今回のミニスタージュでは、こうしたやりとりを通じ、フランスについての知見を深められただけでなく、フランスを通して日本を客観視することができ、新しい気づきが得られました。この経験を今後の業務に生かし、今後の日仏交流の進展に寄与していきたいと思います。

 stage1 stage2 
 イベントの様子 会場設営の様子 

 

2.ナンシーの事例 報告者:灰屋英成(石川県金沢市(ナンシー市と姉妹都市))

 2024年9月9日から11日にかけて実施したミニスタージュでは、ナンシー市においてアントワーヌ・ル・ソルーズ副市長(Antoine Le Solleuz )に、グラン・ナンシー(Grand Nancy)ではフランス・ラエレル副事務総長(Franck LAHERRERE)に面会する機会を頂き、各行政主体における権限分配について、組織構造や行政サービスの実施に係る市とメトロポールの関係性を明らかにする観点から、廃棄物処理や住宅環境の整備、今後の姉妹都市交流の展望など具体的な事例を参考に意見交換を実施しました。また、期間中、グラン・ナンシー観光局にも訪問し、滞在税の概要等を聴取したほか、「Destination NANCY」(グラン・ナンシーが制作する観光HP)の運営費をはじめとする使途の決定方法についてどのような仕組みとなっているか、税額を上げる場合には宿泊事業者などの関係者に対し事前にどのような説明を行うべきかなど、課税における実務的な面も含め関係者からお話を聞くことが出来ました。

 世界で最も観光客が訪れるフランスは、言うまでもなく観光先進国です。そのフランスにおける滞在税を巡る現状について意見交換を行なえたことは非常に有意義でした。金沢市では2019年に宿泊税を導入したばかりでその歴史は浅く、今後滞在税を巡る様々な課題が生じると考えられます。今回の経験が、それらを解決するヒントとなると私は思います。

 stage3
 ル・ソルーズ副市長と記念撮影

 

3.ナントの事例 報告者:阿部耕也(新潟県新潟市(ナント市と姉妹都市))

 2025年1月29日から30日にかけて、政策の概要や地方自治の実情と、特に文化事業についての理解を深めることを目的に、当該研修を実施しました。ナント市及びナントメトロポールについての概要説明や、新潟市と来年度に予定している交流事業の実施に向けたミーティングへの出席、またピエール=エマニュエル・マレ副市長とも面会する機会を設けていただき、新潟にとって大切なパートナーであるナントのこれからの展望や、実務も含めた具体的な状況を理解する非常に貴重な機会となりました。

 今回の研修は、ナント市のクラシック音楽イベント「ラ・フォル・ジュルネ(La Folle Journée)」の開催に合わせた受け入れであったことから、当該イベントに出席し事業趣旨などについて説明を受けたほか、2028年のオープンを予定している新しいジュール・ヴェルヌ美術館に関するプロジェクトについてご紹介いただき、事業を通じ人々の視野や可能性を広げる、ナント市の文化政策におけるコンセプトを肌で感じることができました。

 そして、国際文化交流事業の担当者(responsable)からの事業説明及び意見交換の場では、私からもクレアパリの文化事業について紹介し、クレアや、また新潟市に関する質問を受けながら、今後のさらなる交流発展に向け、互いの興味・関心を含め、理解を深めていく重要性を再認識しました。

 昨年、新潟とナントは姉妹都市締結15周年を迎えました。記念式典の際、ジョアナ・ロラン市長が「姉妹都市とは、互いの歴史、文化を分かち合い、ともに歩んでいくこと」と仰っていたことが強く印象に残っています。今回の滞在中、ナントの皆様から日本や新潟市の行政制度や文化について幅広い質問をいただき、この言葉の通り互いの文化を分かち合うきっかけとなったことを心から嬉しく思っています。たくさんの学びを得るとともに、姉妹都市との強いつながりを改めて感じたこの貴重な経験を、両市がともに歩む未来に活かしたいと強く思います。

                 stage4              stage5             
 クレアパリの文化事業について紹介する所長補佐

造船所の面影を残すナント島を背景に
国際課担当者と記念撮影

 

4.プロムールの事例 報告者:阿久津佑介(総務省)・永井貴子(北海道札幌市)

 2024年12月10日~13日まで、プロムールで過ごした4日間は、とても貴重で、小規模コミューンの課題や現状、公共事業に係る今後の展望などを知るとても良い機会となりました。市役所では、プロムールからラ・トッシュ岬(La pointe de la Torche)まで結ぶ自転車専用道路(Pistee cyclables) の建設事業を始め、プロムールの各事業についてRonan CRÉDOU市長から説明を受け、さらには、会議室での説明だけで終わるのではなく、その後に現地視察を行うことで、プロムールが取り組んでいる課題や進行中の事業などを実際に目にすることができ、とても印象的なものとなりました。

 また、プロムールとプロムールが所属するEPCI(Établissement public de coopération intercommunale、コミューン間広域行政組織※)との権限分配について学べたこともとても勉強になりました。EPCIの行政構造は、フランスと同じ少子化と過疎化という大きな問題を抱える日本には無い制度であり、フランスの小規模コミューンにとってはとても重要な制度だと考えられます。今回、その制度運営を巡っての実務的な観点から構成コミューンの事務総長の皆さまと意見交換が出来たことは非常に有意義でした。加えて、今回の訪問では、ビグダン地方の伝統の音楽や衣装に触れる機会もあったほか、プロムール周辺の観光施設や地域の漁業を支える漁港の視察など、行政機関だけでなく地域の生活や文化にも触れることができました。

 今回のミニスタージュでは、市長や助役の皆さまを始め、プロムールが所属する広域行政組織の事務総長、各事業の担当者など多くの有識者と意見交換する機会をいただきました。行政分野だけでなく、観光・文化施策も含めた多方面の視点からプロムールを中心としてビグダン地方を視察できたことはフランスの地方都市の現状を理解する上で大変重要であり、そして過疎化や少子化が進む日本の地方部の課題に我々日本の公務員がどう向き合えば良いかを考えるとても良いきっかけとなりました。

stage6 
  Ronan CRÉDOU市長及び助役、Colette LAUTRÉDOU事務総長との集合写真

※ フランスでは、コミューンの合併推進策がなかなか進展しない反面、広域行政組織の方式が広く利用され発展してきた。コミューン間広域行政組織は構成人口、目的等の要件により様々な形態をとるが、代表的なものとして、メトロポール、大都市共同体、都市圏共同体及びコミューン共同体と呼ばれるものがある。これらは、広域行政組織自体が独自の税源を持ち、法律によって規定された一定の義務的権限(地域整備や廃棄物処理等)を与えられる。

■ フランス語版はこちら

■ Pour consulter la version en français, cliquez ici.

Tagged under: 国際交流